平成23年6月定例会一般質問 / 質問内容

2.防災対策について

続いて防災対策についてです。

福祉避難所についてです。福祉避難所とは、地震や津波などの大災害が発生した時に、介護の必要な高齢者や障害者、病人などのうち、特別の配慮を必要とする人たちを一時的に受け入れてケアする施設のことです。

通常の避難施設となる小学校体育館など避難所での生活が困難な方のための避難所と位置づけられています。

平成20年に厚生労働省から「福祉避難所設置・運営に関するガイドライン」が出され、自治体と福祉施設の間で福祉協定を結ぶところが少しずつ増えて来ています。

そして民間福祉施設を福祉避難所として活用させていただくためには、事前に市町村と事業者が協定を結んでおく必要があります。

和歌山県では平成20年6月に「和歌山県災害時要援護者マニュアル」を策定し、その避難所における支援の項目で、「市町村は避難所を設置すると同時に、介護員等の支援が必要な要援護者を対象とする福祉避難所を設ける」と明記されています。

現時点において和歌山県下では71箇所、想定収容人員は3,333人の福祉避難所が設置されているように、災害発生時における要援護者対策を進めてくれていることは心強いことです。

ところが市町村によって取り組みに温度差があるようです。今回のような大災害が発生すれば、まともに影響が出るのが要援護者の方々です。自力で避難することが出来ないことや、仮に体育館に辿り着いたとしても支えがないと生活できないことになります。そんな皆さんに日常生活上の安心を提供できるのが福祉避難所ですから、市町村を問わず協定を進めるべきです。

質問1

和歌山市における福祉避難所の箇所数を示して下さい。要援護者が多いと思われる和歌山市ですが、もし協定数が少ないとすれば何故、福祉避難所の取り組みが遅れているのか、その理由をお答え下さい。

和歌山市における今後の福祉避難所協定の見通しと進め方についても、福祉保健部長からお示し下さい。

続いて災害時の要援護者対策についてです。

東日本大震災が発生した直後から、地域の皆さんと防災について話し合いをしてきました。中でも気をつけておきたいことは要援護者の皆さんへの対応です。非常時は自分のことが精一杯で、地域内の要援護者の方の共助は次の段階のことになる恐れがあります。

私が出会った人の中だけでも、目が不自由な人、車椅子が欠かせない人、透析を受けている患者の方、高齢のため一人では歩く距離が限られている人などがいました。「和歌山で津波が発生したら逃げられないので、自宅で襲ってくるのを待つだけです」と諦めて話してくれた人もいました。これらの要援護者の皆さんへの逃げ方、避難場所の周知がされていないと思いました。

要援護者への対応は難しいことは分かります。一人ひとり事情が違いますから、統一的な対応はできないからです。マニュアルでは、市町村が在宅の要援護者の把握をすることになっていますが、その情報を実際に支援してくれる人、例えば民生委員や自治会の方々と共有することは簡単ではありません。

市町村が整えている台帳には、避難行動要援護者の把握や、個別計画策定のための登録の働き掛けが謳われていますから、それが機能していれば大災害発生時には要援護者を支援することが可能です。しかし台帳を見せてもらうと、書き込むべき情報量が多すぎて、援護を求める人が書き切れるようなものとは思えませんでした。しかし、これが整備されているとすれば、要援護者対策は相当進むと思います。

質問2

災害発生時の要援護者の登録を受けて、具体的な個別の避難計画や対応が可能となっているのでしょうか。私が回った限りにおいて、この支援体制や台帳の存在を知っている要援護者はいませんでした。

また自治会単位で、自治会内の企業や高いビル所有者などとの非常時における避難場所として使えるような協定は、要援護者にとっては有効であると思います。行政主導で話を進められないものでしょうか。福祉保健部長にお答え下さい。

続いて学校登校、下校時における防災対策についてです。

小中学校、高校の生徒が自宅にいる場合や学校内にいる場合の防災対策は大人が傍でいるので大丈夫だと思いますが、登校や下校時など生徒が一人になる時間帯に災害が発生した場合、情報伝達や逃げ込む場所が問題となります。通常であれば、ここまで考えるべきことではないかも知れませんが、東北の震災以降、保護者の皆さんは、どんな場合においても子どもの生命を守りたいと思っています。ですから大人との情報が遮断される環境下での防災対策も検討して欲しいと思います。

通学路にある避難施設を日常から知らせておくこと。教室に避難施設の地図を貼っておくことなども方法だと思います。携帯電話の活用は違う問題もありますから、強く勧めることは出来ませんが、携帯電話による情報伝達も考えられます。

通学途中における生徒の安全対策は、主に海に近い場所にある学校に通っている保護者から意見が寄せられています。学校の立地によって防災対策は違ってくるのは当然と思いますから、学校単位での防災の取り組みの中で検討して欲しいと課題です。

質問3

登校、下校時に災害が発生した場合の生徒への情報伝達と避難方法についてはどう考えていますか。また保護者の学校と皆さんとの連携も必要と思いますが、学校としてのソフト面での防災対策についてお答え下さい。教育長にお願いします。

(1)和歌山市における福祉避難所について
(2)要援護者への支援対策について
答弁内容
答弁者:福祉保健部長

和歌山市における福祉避難所の箇所数ですが、和歌山市では、これまで福祉避難所の指定を行った例はないと聞いております。和歌山市において福祉避難所の指定が遅れていることについては、特段の理由はないようですが、県で「災害時要援護者支援マニュアル」を策定し、市町村に周知してから既に約3年が経過していることからすれば、和歌山市の取り組みは遅れていると言わざるを得ません。

今後、県としては、和歌山市における福祉避難所の指定に向けて、強力に働きかけてまいりたいと考えております。

次に、災害時の要援護者対策につきましては、市町村において、避難時の支援者が身近にいない避難行動要支援者一人ひとりに対応する「個別計画」の策定を進めているところです。

本年4月1日現在、26市町で策定中となっており、現在のところ、要支援者の登録者数は約1万8千人、このうち約3割の方について個別計画が作成されております。

県といたしましては、残り約7割の方の個別計画の作成を求めるとともに、民生委員・児童委員はじめ地域住民の協力を得ながら、更なる要支援者の把握及び個別計画の作成を促進するよう引き続き働きかけてまいります。

また、自治会や自主防災組織が建物所有者の同意のもと、民間の建物を非常時の避難場所として活用することは、要援護者の避難支援をより早く安全に行うための取組として、有効な支援策であると認識しております。

県といたしましては、こういった有効な手法について、市町村において積極的に取組を検討するよう助言してまいりたいと考えております。

(3)登校、下校時における避難方法について
答弁内容
答弁者:教育長

登校下校時における避難方法、避難場所及び情報伝達については、学校の置かれた地理的条件等を踏まえた適切な指導の徹底と伝達体制の構築が必要であり、すでに登下校時の対応も含めた各学校の防災対策の総点検を行うよう指導しております。

こうした中、学校によっては、親子で話しあって家庭における防災マップを作成したり、自治会と連携して高層マンションを避難場所とするなど、積極的な取組が始まっております。

登下校時の避難については、子どもたち自身に地域の避難経路等の実情を確認させるとともに、一刻を争う時にはマニュアルによらず主体的に判断し行動できる力を身に付けさせる必要があります。そのため、現在作成を進めている地震・津波防災教育のための教材を活用し、防災意識を一層高める取組を進めることといたしております。

また、今回の東日本大震災後に教育庁内に公立私立を含めた防災対策会議を設置し協議を行うとともに、各学校に対し防災対策に関する実態調査を行いました。それらの結果を踏まえ、地域の方々の協力のもとに保護者や学校への緊急連絡体制を構築するなど、登下校時も含めたよりきめ細かく柔軟な対応策を講じるよう、通知することとしています。

今後とも、児童生徒の命を守ることを最優先に、学校における防災対策に万全を期する所存でございます。