平成23年2月定例会一般質問(予算特別委員会) / 質問内容

質問内容

  1. サービス付き高齢者住宅制度について
    (1)法改正後の建設費や改修費の補助額について
  2. 入札制度に関する地元下請事業者の適正利潤の確保について
    (1)地元建設事業者に適正な利潤を確保できるような仕組みについて
  3. 国際人育成プロジェクトについて
    (1)高校教師の英語でのディべート指導に関わる研修について
    (2)小学校英語教育の先生への指導について
  4. 和歌山県環境基本計画(案)について
    (1)相反する課題への対応について
    (2)風力発電の見込みについて
    (3)メガソーラー発電施設の誘致について
    (4)省CO2の取り組みについて
  5. 人口減少時代の和歌山県のあり方について
    (1)人口減少と高齢化に備えた県の取り組みについて

サービス付き高齢者住宅制度について

高齢者の居住の安定確保に関する法律が改正されています。高齢者支援のための「サービス付き高齢者向け住宅」がそれです。介護と医療を連携させて高齢者を支援するサービス提供の必要性は理解できますが、改正によって生じる問題点も考えられます。

居住環境では個室の床面積が原則25m2以上になります。現行の有料老人ホームでは個室13m2以上となっていますから、個室の平米数は倍になることになります。

そのため建設費が増加することや、同じ規模の建物の場合、サービス付き高齢者向け住宅の部屋数が減少することから入居者負担が増加することになります。

低所得者向け、あるいは年金生活者向けの有料老人ホームの確保が課題となっていることからすると、主旨は理解できるものの現実的には、サービス付き高齢者向け住宅に入居できない高齢者も出てくることが予想できます。

勿論、有料老人ホームも存続することから、そちらで対応できると言えばそれまでですが、介護と医療を連携させてサービス提供を志向する考えに基づくと、入居を希望する人が入れる価格帯にすべきだと考えます。

  • 法改正後の建設費や改修費の補助額を増額させることが必要だと思いますが、その点に関して県の考え方をお聞かせ下さい。
(1)法改正後の建設費や改修費の補助額について
答弁内容
答弁者:県土整備部長

法改正による建設費の補助額の増額はどうなるのかという議論である。サービス付き高齢者住宅制度については、平成23年度中に、既存の制度である高齢者向け優良賃貸住宅制度などが廃止され、「サービス付き高齢者向け住宅制度」が創設されるというふうに聞いている。

この制度改正は、従来の高齢者向け優良賃貸住宅に、新たに緊急通報やあるいは安否確認等のサービスを付加するものである。したがって建設費については、1戸当たりの面積基準が変わらないために、現状と同額程度になるものと考えている。建設費の補助については、法改正後、地方公共団体が交付金を活用して補助を行うものと、国が事業者へ直接補助を行うものの2種類あるように聞いている。今後、この補助制度の活用を事業者の方々に周知指導していく。

入札制度に関する地元下請事業者の適正利潤の確保について

和歌山県内には、仕事の大部分を公共工事に依存している比較的小規模の事業者が数多くあります。落札した事業者の孫請け段階などで入ると、仕事に見合った金額を受け取れない状況もあることを聞きます。それでも利益が出ないことが分かっていても、仕事を請けなければ他に持っていかれるため仕事に入っているようですが、そのしわ寄せを地元の会社、そして人件費の削除、つまり従業員の給与減少に向かわせている現状があります。

建設業界において低価格入札が評価されるような意見や、公共事業に対する適正利潤確保への批判がある限り、地元建設事業者が適正な利潤を得る状況にはなりません。

経済行為として会社が利益を求めることは当然なのに、建設業にはそれが許されていない状況がおかしいのであって、適正な利潤を得ることができない入札制度は、地域社会を壊してしまうことにもなり兼ねません。適正価格による受注環境をつくり上げることへの指導が必要ではないでしょうか。現場の意見を聞いていると、元請けの会社の利潤は確保できているとしても、下請けに入っている会社の利益が薄くなっている、または確保できないでいるようです。

入札した公共工事の安さは適正な価格なのかも検証する必要があると思います。落札率だけで善悪の選別することが続くと、地域経済にも大きな影響を与えることになります。

適正価格に関して松下幸之助氏は、国家的、社会的、業界的、自社的の4つの立場で考えなければならないと伝えています。

それは、適正価格によって会社の維持・安定が図られ、そのことが社会の一員として利益を配分し、国家にも一定の収入、財源を与えるというものです。半世紀前の講演会では、「こうした4つの観点から考えて決定した適正価格というものは、非常に正しい価格であり、言ってみれば神に許された価格といえます」と語っている。さらに「その動かしてはならない価格を、単なるその時々の状況で動かすのは、神の意志に反することになろうかと思います」とも話しているのです。 地元の会社が収益悪化によって廃業をすることは、地域の衰退や税収の悪化につながります。和歌山県における建設業界の衰退は、建設業界だけの問題ではありません。地域の経済を崩壊させ、地域の活力を削ぐことにもなります。適正価格による受注であることが、県内建設業界を守ることになると思います。

  • この観点を踏まえて、県内事業者と従業員を守るための入札のしくみについて手段を講じられていますか。厳しい価格競争に巻き込まれている地元建設事業者に適正な利潤を確保できるようなしくみを構築できないものでしょうか。
(1)地元建設事業者に適正な利潤を確保できるような仕組みについて
答弁内容
答弁者:県土整備部長

入札制度に関する地元下請事業者の適正利潤の確保については、過度な低入札にならないよう、予定価格1億円未満の工事には最低制限価格を設定している。最低制限価格は、工事の品質低下、下請事業者へのしわ寄せなどの弊害が懸念されることから、これを下回った場合は失格となる価格である。

なお、最低制限価格は、必要に応じ順次引き上げ等の見直しを行ってきている。

また、予定価格1億円以上の工事には、低入札調査基準価格を設定し、これを下回った応札に対して、下請予定内容報告書等の提出を求めている。このうち、特に価格の低い応札については、下請事業者の見積もり等が妥当かを確認するなどの「特別重点調査」を厳格に行っている。今後とも、国の制度の動向等も見ながら、下請事業者及び従業員へのしわ寄せ等の防止に努めていきたい。

(要望)

特に、この時期は現場の意見を聴くことが非常に多い。是非、現場の意見にも耳を傾け、より県内の経済が発展し、疲弊することのないようにして欲しい。

国際人育成プロジェクトについて

平成24年度から公立高校で実施する予定の「実践的な英語力の向上を目的とした授業」が注目と期待を集めています。外国人と対話できる英語力を身に付けるための教育は待望していたものであり、日本語で考える力を持ち、それを英語で表現できる力を持った生徒を輩出する県として全国から注目されていることは素晴らしいことです。オールイングリッシュで英語教育を行うと聞いていますが、その第一段階として、平成23年度は指導に関わる先生への研修を計画しています。

  • 高校教師の英語でのディベート指導に関わる研修とはどのようなものですか。予算1千万円で十分な研修ができるものなのでしょうか。お示し下さい。

続いて、県内の英語教育には県では力を入れていますが、特に和歌山市内で3校のモデル小学校に対して実施している小学校外国語活動支援授業では先生への外国語研修を行っている取り組みが成果を挙げています。

研修開始前には、外国語授業に対して不安を抱えている先生が大半であり、外国語活動に対する抵抗感があった先生達が自信を持つように変化しているのです。「研修と実践を重ねる毎に外国語活動に自信がついた」という意見も聞いています。オリジナル教材として使用したものや授業の進め方については東京のメーカーから注目され、その取り組みを外国語教育の機材として取り上げたいという依頼があり、水平展開できるように教材化が進められていると聞いています。

和歌山市のモデル小学校での取り組みが、小学生に対する外国語教育の和歌山県発の教材になろうとしています。このような成果を挙げている取り組みですが、平成23年度で終了しそうになっています。知事は今議会一般質問の中で「子どもの将来を、予算が無いからといって犠牲にするとことはしない」と答弁しています。

  • これからの小学校への英語教育の先生への指導に関しての考え方、そして和歌山市の小学校外国語活動支援授業を全県下に拡大、継続についてどう考えているのか、質問いたします。
(1)高校教師の英語でのディベート指導に関わる研修について
答弁内容
答弁者:教育長

英語でのディベート指導に係る教員の研修については、ディベート等の指導を普段行ったことのない教員が多いと思われるため、専門家に講師を依頼し、具体的な授業の仕方を身に付けさせることを目的としている。

現在、高校生の言語能力を7段階に分け、各段階の目標を達成するための指導方法やプログラムの検討作業に入っている。研修は、県立高校英語科担当教員約260名全員を対象に県内数カ所で、1講座20名、3回程度の規模で行うことを予定しており、実践につながる研修が十分に行える。

(2)小学校英語教育の先生への指導について
答弁内容
答弁者:教育長

小学校外国語活動に関しては、すでに平成15年度から5年間、イングリッシュ・パワーアップ・プログラム事業を実施し、総合的な学習の時間を活用した英語活動の指導力向上に取り組んだ。

また、来年度からの小学校外国語活動の本格実施に向け、CDやデジタル教材を配布するなど、楽しみながら外国語を聞いたり話したりする活動を充実させるための教員の指導力向上に努めてきた。

その結果、教員の指導力は着実に向上してきているととらえており、今後、すべての小学校で外国語活動が継続的に行われていくことを考えると、外国語活動に係る現職教員のより一層の指導力向上に努めていく必要がある。

こうした中、和歌山市での「小学校外国語活動支援・サポート事業」は、議員ご指摘のとおり、外国語活動の授業に不安のある教員にとって、有効な方法であるので、県が先行実施して取り組んできた各種事業を継続・発展させる中で、その成果を各小学校に広めていきたいと考えている。

和歌山県環境基本計画について

第三次和歌山県環境基本計画が策定されています。その中で謳われている風力発電施設の設置に係る環境配慮の推進とはどのようなものですか。

再生可能エネルギーとしての風力発電の導入は、平成19年度の2,350kWから、平成21年度は63,340kWへと大幅なに増加しています。和歌山県として再生エネルギーの導入を加速させ、中長期的に供給構造を改革していることが必要だと指摘する一方、環境影響などの課題に対処することを求めています。

  • 相反する課題にどのように対処していこうとしているのでしょうか。
  • 続いて、事業者の計画ベースで約100基の風力発電がありますが、第三次和歌山県環境基本計画の最終年である平成27年度の達成の見込みについて教えて下さい。
  • 再生可能エネルギー関連企業の誘致に積極的に取り組むとあります。特に日照時間の長い特性をアピールすることで、県内へのメガソーラー発電施設の誘致を積極的に推進することを掲げています。県がメガソーラーを積極的に掲げていることに、良い意味で驚いていますが、その取り組み状況と、積極的に支援する具体的方策、例えば優遇措置や市町村との連携のしくみなどについて示して下さい。

次に省CO2の取り組みについてです。地球環境問題に対処するためには、従来の省エネルギーの取り組みに加えて省CO2対策を進めて行くことが必要であると考えています。

第三次和歌山県環境基本計画において、民間事業者と県民の皆さんには省エネルギーと省CO2の取り組みを求めていますが、県の取り組みの中には省CO2の取り組みが書かれていません。

ところで温室効果ガス削減に関して、産業技術研究機構の茅陽一氏が考案した恒等式があります。

温室効果ガス排出量=人口×(GDP/人口)×(エネルギー/GDP)×(温室効果ガス排出量/エネルギー)という式です。

この式からすると温室効果ガスの排出量を削減するためには、国民の人数を減らすこと。

国民一人当たりの生産額を減らすこと(貧しくなる)。生産額当たりのエネルギー消費量を減らすこと(省エネルギー)。エネルギーの温室効果ガス排出原単位を改善する(エネルギーの低炭素化)の対応が必要となります。

国力維持の観点から人口削減は考えられないことであり、国民に「貧しくなること」を求めることもできないことです。ですから地球環境問題に対応するためには、省エネとエネルギーの低炭素化の取り組みがあるだけなのです。

省エネは現在の延長線上にあることから、比較的取り組み易いものですが、省CO2はCO2排出量の少ないエネルギーにシフトすることが必要ですから、負荷のかかる取り組みとなります。

  • つまり再生可能エネルギーの推進や低炭素エネルギーの選択が求められますが、この計画では再生可能エネルギーの導入に関して挑戦的であり、県が主体的に推進することを内外に示すためには、省エネに加えて省CO2の取り組みが必要だと考えますが。この省CO2の取り組みに関して考え方をお示し下さい。
(1)相反する課題への対応について
答弁内容
答弁者:仁坂知事

再生可能エネルギーの利用を促進することは、低炭素社会を目指す社会の要請に応えることであり、風力発電は、地球温暖化対策のため利用が期待されるツールである。

風力発電施設の設置に当たっては、新たな課題として発生した環境影響への配慮が必要である。また地域活性化の観点から誘致したいという気持ちもある。

環境影響の配慮については、環境影響評価法の改正の動向も踏まえながら環境影響の回避・低減に取り組む。環境と両立させながら再生可能エネルギーの利用の促進に取り組む。

(2)風力発電の見込みについて
答弁内容
答弁者:仁坂知事

風力発電施設の設置は、基本的に事業者が経済合理性等を考えて計画するものであり、県としては環境負荷や地域住民への影響について十分な配慮がなされるよう情報収集に努めている。

現在、事業者が計画を公表している風力発電施設が約100基あることは認識しており、環境や地域住民等への影響が軽微でかつ地域にとってメリットのある事業計画があれば、県としても必要な情報提供などを行って、前向きに事業の進展を見守ってまいりたい。

(3)メガソーラー発電施設の誘致について
答弁内容
答弁者:仁坂知事

本県はわが国有数の日照時間に恵まれた地域であり、太陽光発電に極めて適していると思う。メガソーラーの立地を積極的に推進したいと思っている。それにあたっては、各種調整や届出手続きなど、事業者の負担の軽減を図ることが、まずは有効な支援策であると考えている。その観点からは、地域の信頼を醸成することや複雑な行政手続きをワンストップ化することなどが特に有効であり、本県としては、引き続きそのための取り組みを徹底してまいりたい。

(4)省CO2 の取り組みについて
答弁内容
答弁者:仁坂知事

温室効果ガス削減については、従来の省エネに加え、省CO2という考え方は非常に重要である。取り組みについては、大きく3つに分けられる。1つは需要側として、県自身が県民、事業者の一員として率先垂範して省CO2のものを使っている。取り組みとしては県有施設への太陽光発電導入、電気自動車など環境対応型公用車への転換などである。2つはエネルギーの供給側として、バイオマスエネルギーの利用、風力発電、太陽光発電、森林吸収に県は十分取り組んでいる。3つは、直接的な省CO2 の取り組みのほかに、「人と自然が共生する社会の構築」、「循環型社会の構築」等の目標を達成する取り組みを行う ことでもCO2の森林吸収や再生可能エネルギーへの転換など、省CO2と同等の効果に繋がる。

以上のことを環境基本計画に盛り込んで、行政は勿論のこと県民、事業者みんなで省CO2 に取り組んでいきたい。

人口減少時代の和歌山県のあり方について

地域経済を考えるに当たって、地域が持続的に存立していくための対応を検討するためには、今後の地域経済の将来見通しを行うことが必要です。国立社会保障・人口問題研究所の2005年の国勢調査に基づいた調査によると、和歌山県の2035年の人口推計は737,908人となっています。また高齢化率は38.6パーセントであり、生産労働人口も384千人と大きく低下すると予測されています。社会的要因による人口増加を図らないと、和歌山県の活力そして経済力は著しく低下することになります。

ひとつは、知事が進めているように企業誘致によって人口を増加に反転させる取り組みが必要です。現在も、そして将来においても企業誘致は最重要な取り組みであり、その成否に和歌山県の将来がかかっています。

しかし一方では人口減少時代に備えることも必要です。和歌山県では確実に高齢化が進みますから、医療と福祉分野における公共サービス提供が求められますが、財政面から考えると、公共サービスや公共インフラを現在の形で提供することは困難になると思われます。

人口減少、地域としての所得、購買力や人口構成に変化による市場の変化も現れると思います。介護、医療、福祉サービスを新たな域内産業として育てていくことができれば、人口減少に伴う影響を軽減させることも考えられます。つまり大都市よりも早い段階で和歌山県は高齢社会に突入する訳ですから、今から福祉、医療先進県としての投資とサービスを確立させることによって、将来の福祉分野への公共投資を抑制させることもできるのです。

  • 和歌山県は製造業の構成が、鉄鋼や石油といった特定の業種に偏っているので産業構造を転換させる必要を感じます。素材型の業種だけでなく、環境や新エネルギー分野あるいは加工型産業などの企業誘致によって業種構成の多様化を図ることも重要です。そのため知事が自信を持っている「和歌山県長期総合計画」で進められている、4つの地域の特性を踏まえた産業育成や企業立地の促進を果たして欲しいと思います。
    このような人口減少、特に労働人口減少に対しては企業誘致による社会的人口を増加させること。そして人口減少と高齢化に備えた県を目指すことで、高齢化に最も対応した県としてのポジションを確立させることも可能です。このような両面の取り組みが考えられますが、知事の見解をお示し下さい。
(1)人口減少と高齢化に備えた県の取り組みについて
答弁内容
答弁者:仁坂知事

人口減少に取り組むために、「働く場を増やす」ことについては、様々な業種にわたる企業誘致はもちろんのこと、県内の産業にも頑張ってもらうということが大事なことだと思います。少しは人口流出が減ってきている気もしますが、まだまだ不十分ですので、これからも、もっともっと取り組んでいかなければいけないと思います。

従来からの製造業などに加えて、これからの社会の中で、明らかに、ご指摘の医療・介護・福祉などのサービスは需要が多くなってくる産業であると思いますし、供給側の要因として、風光明媚、気候温暖、しかも医療技術などが最近特に高まっているという和歌山としては、ぜひ狙いたい産業であるというふうに思う訳であります。

ところが、ここで気をつけておかなければいけないことは、医療、介護、福祉等のサービスは、公的資金で賄われている部分が多いため、それによって、地域の活性化を図るということになると、公的資金をたくさん投入する必要があり、自立的に発展してくれればよいが、むしろ公的セクターの財政状況等の悪化につながるのではないかと考えます。

従って、こういう介護・医療・福祉サービスを新たな域内産業として、自立できるようなものとして、どういう風に育てていくかというのが、これからは大変、大事な問題となってくると考えており、そのために、色々な可能性を模索して、積極的な手段を講じていきたいと思います。