活動報告・レポート
2012年10月31日(水)
高速道路
工場立地

日本国内のメーカーは国内と外国に自社工場を持っています。世界各地に生産拠点を設けることはその国の税制や輸送コストの圧縮など有利な面がありました。また工場と機材は資産ですから企業力を高める意味からも効果がありました。しかし技術革新の速度が速まり、今日最新の技術でも明日になれば遅れた技術になることや、折角技術開発を行っても即座に同類の製品が市場に出てくる現状からすると、自社工場で製造ラインを整え持っていることが必ずしも有利とは言えなくなってきました。

むしろ組立工場を持たないで人件費などのコストが安い地域の工場に組み立てを委託する方が、製品は安価に仕上がり、また新しい技術にも対応できるので競争力が増しています。アップルなどの世界企業は世界各地の適切な工場に委託して製品を製造していますが、その方がコストの負担は少なくて済むからです。

かつて自社工場は資産でしたが、今では不良資産に変わろうとしています。世界企業は自社工場を持つ必要がなく、古い設備を要するだけの工場の買い手はなくなり、不良資産となっていくのです。日本企業が国際競争で苦戦している理由の一つになっています。

それに対して世界的空調メーカーのダイキンの戦略は、これまでの日本企業の戦略と明きらかに違っています。それは新しい技術を開発して市場に製品を送り出した後は、その特許を公開しています。オープンソースにすることでライバル企業にも同様の製品を造る機会を与えるのです。

ダイキンが作り出した市場へライバル企業の参入を促進させているのです。当然、その製品の市場規模は大きくなりますから、先駆者であるダイキンの製品は市場の拡大と共に売れることになります。

そしてその間にダイキンは次の技術の開発に着手しているのです。ライバル企業が市場に参入して市場の拡大が止まる頃、次の新製品を市場に投入します。そして特許を公開して再びライバル企業の参入を促すのです。製品のライフサイクルが短くなっている今日、この循環を繰り返しているのです。

世界は技術戦略からマーケッティング戦略の時代に入っていることを示す事例です。技術戦略に固執している企業は市場を増やすことはできません。一つの新製品が市場に投入されると同種の製品が次々に登場してきます。規格が違う場合、後で登場した製品の方の扱いが容易で優れているとすれば、先に登場した製品は市場で支持されません。

それよりもオープンソースにして同規格のものの登場を促進する方が、製品は市場で生き残れるのです。戦略を変えること、しくみを変えることが世界の競争で勝ち抜く秘訣です。

そう考えると、世界市場で戦っている大企業が国内に新工場を建設することは考えられません。これから将来にかけてもこの流れは変わらないと思います。流れとは不思議なもので一度流れができてしまうと止めることはできないのです。時代は流れに沿って行き着くところまで流れを変えません。世界経済で円高が続くように、ドル安が続くように、これからはユーロ安が続くことになります。

製品も同じで自社工場で製造することに戻ることは考え難いのです。技術革新がなく同じ製品が同じ市場で長期的に売れ続けることがあれば別ですが、経済が成長を志向する限りそんなことは今後ともあり得ません。

国内の地方都市が大企業の工場立地を待っていても、そんな時代は到来しないことを前提に県土発展を考えるべきです。時代の流れに沿ったものを取り入れること、それを続けることが持続的成長につながるのです。世界経済の流れを地方の自治体が止められるほど、世界は甘くはありません。時代が指名しているものを取り入れる、受け入れることが都市の発展につながります。流れをつかめなければ、その次も、またその次も流れに乗ることはできません。機会を逸すると次はないことを自覚して企画と行動をしたいものです。

高速道路
高速道路

大阪から学生が訪ねてくれました。卒業論文で高速道路を生かした地域活性化をテーマにするため状況調査に来たものです。和歌山県内には幾つかの高速道路計画がありますから説明をした後、意見交換を行いました。

高速道路には大きく物流、観光、防災の機能があります。どれも大事な機能なので優先順位はつけられません。観光の道であったり、時には防災機能を果たす道でもあります。そして京奈和自動車道は世界遺産の道という付加価値もあります。高速道路が通じると地域に物流と人の交流が発生しますから活性化することになります。高速道路のインターチェンジは基本的には一市町村に一つのインターチェンジを設置することになっています。有料の高速道路の場合は、約10km毎にインターチェンジを設置することもありますが、概ね一市町村にひとつ設置されることになります。この周辺の土地を活用することによって当該地域の活性化が図れます。和歌山県の場合、和歌山北インターチェンジが完成した結果、これまで開発されていなかった和歌山市所有の用地が物流拠点や商業施設として生まれ変わりました。また京奈和自動車道のインターチェンジがある橋本市の工業団地は新しい立地が生まれています。インターチェンジはこのような好影響を与えてくれます。

参考までに有料の高速道路はNEXCOが建設の実施主体となり、無料の高速道路は国土交通省が建設主体となります。そして高速道路は有料が良いのか無料が良いのかは議論が分かれるところです。この課題を考えると判断は難しいのです。

高速道路を無料化すると今よりも渋滞となり物流に支障が起きます。料金設定を変更すると交通の流れが変わります。かつて阪神間の高速道路で湾岸道路の通行を増やして従来の高速道路の渋滞を緩和するため料金設定を変えたところ、やはり通行料金を安価に設定した湾岸道路に流れたことがあるようです。このように料金設定次第で交通量が変わることになります。

もうひとつの観点が有料見高速道路の補修や維持の負担はNEXCOが担うため、それらの費用負担は当該道路のユーザー負担となります。無料高速道路の場合は国土交通省なので税金で維持費用などを負担することになります。つまり利用していない人もこれらの費用負担をすることになります。誰が負担するのかの問題もあり、無料化を考えるべき場合の視点となります。

そして高速道路には大事な視点があります。物流と観光、防災に加えて時間の道だという視点です。人は動きたいと思った時、まず時間を考えます。例えば、和歌山市にいる私が田辺市に移動しようとした場合、高速道路を利用すると約1時間、途中国道を利用する場合は約2時間と考えます。田辺市に行く目的とその後の予定によって時間配分を考えて移動方法の意思決定を行います。

田辺市の会議は午後1時からで、午後5時までに和歌山市に戻らなければならないと考えると、有料だけれども高速道路を利用するという判断をします。

和歌山市から海南市に移動する場合、国道を利用すると約30分、高速道路を利用すれば約10分だとします。仕事の込み具合や途中に立ち寄る相手次第で高速道路の利用の優位性を判断するのです。つまり人は時間利用によって自己が得られる利益を最大になるような合理的判断を下すことが一般的です。

命の次に大切なものは時間だと答える人が多いと思います。最も大事な時間を有効活用するために時間を最優先に考えて行動するのは当然のことです。時間短縮を図る手段としての高速道路の役割があるのです。

都会では時間短縮できる機会があり、大切な時間を有効活用できているのに、地方都市では時間短縮が図れないため、ビジネスや自己の利益の最大化を図るための大切な機会を逸しているとすれば、得られる利益を損失しているとも考えられます。高速道路は大事な時間を上手く活用するために必要な手段だという考えも、必要性の第四の視点としておきたいものです。時間という資源を有効活用できる手段としての高速道路ですから、将来とも消え去ることは考え難いのです。

高速道路について有意義な議論をかわすことができました。この議論も参加にしてもらって立派な卒業論文を完成することを期待しています。