活動報告・レポート
2012年10月5日(金)
経済警察委員会三日目

視察の最終日です。香川県東かがわ市にある日本手袋工業組合を訪問しました。事務局長から説明を受けたのですが、とても驚くことがありました。

東かがわ市の手袋生産シェアは全国の90パーセント以上を占めていること。しかも限りなく100パーセントに近い90パーセント台のシェアを占めているのです。地元では手袋の生産地は東かがわ市以外に存在していないと思っているのですが、もしかしたら知りえない場所で手袋生産をしているかも知れないので、100パーセントとは言わないでいるようです。事実上、手袋生産は東かがわ市が独占している産業なのです。

手袋といっても日常生活で使用するものやアスリート向け、消防署員向けのものなど用途は様々です。アスリート用の手袋はスポーツメーカーのブランドが付けられているため、製造者や産地が分からないのです。そのため東かがわ市の名前は出てきませんが、ほぼ全数がこの地で生産されているものに間違いありません。スポーツ手袋に関しては100パーセントだと言い切っていたことから事実であることが分かります。

同組合の手袋の展示場には、フェンシングの太田選手の手袋やサッカーの全日本のゴールキーパーでる川口選手の使用したものが展示されていました。その他にも阪神タイガースの金本選手やプロゴルファーの手袋などが見ることができます。

さてこの場所で手袋が製造され始めたのは124年前のことです。古くから地場産業として栄えてきました。この組合ができたのは50年前のことで地場産業を守り広報するための活動を行っています。

手袋製造の機械は和歌山県の島精機の製品を使用していることは嬉しいことです。手袋の産地を支えるため、島精機の支店がこの地にあると聞きました。

ですから安価な手袋はここで製造を行っています。しかし高級手袋の製造の90パーセントは海外工場で製造しているようです。理由は簡単で手袋を縫える人が存在していないからです。手袋製造の技術がここでも失われているのです。かつてここでは、昼間にミシンの音が聞こえない日はなかったのですが、今ではミシンで縫う人がいなくなっているので街の光景も変化しているようです。

事業者は246社あったものが現在は83社に減少しています。売上高は平成3年度がピークで680億円ありましたが、平成23年度は340億円と半減しています。理由は高い製品が売れなくなっていることと、デフレの値下げ圧力があり手袋価格が低下していることにあります。それでも手袋の生産数は4,200万ありピーク時と変わっていないようです。如何に単価が下がっているかが分かります。

これからの課題は技術者の確保と売り上げを伸ばすことです。どちらも厳しい課題となっています。ただ手袋製造はニッチ市場なので大手が算入してくる心配はないようです。それは利益率が低いことや、東かがわ市が圧倒的シェアを占めていることから今から市場に参入することが困難だからです。

利益が低いのは、ブランドのOEMで製造すると利益率が薄く、利益率の高い自社ブランドで販売すると売れないからです。この組み合わせによって活路を見出しています。

そして広報戦略に関しても意見交換を行いました。同組合では東京で広報することに効果があると思い、毎年800万円の予算で20年間、広報活動を実施してきました。地下鉄や山手線での車内広告や百貨店や駅中でのイベントも行いましたが、全く効果がないことが分かりました。東京で広報活動をしても自己満足に終わり、何の効果もないようです。

そのため地元からの発信力を強化する方が、マスコミが取り上げてくれることから地元からの情報発信に広報活動を切り替えています。東京よりも地元のマスコミ対策が重要なのです。このことは他の分野や地方都市にも言えることだと思います。

圧倒的な日本一の手袋の産地でも、そのことは東京では知られていないのです。如何に認知度を高めることが難しいことか分かります。和歌山県も同じ悩みを抱えています。これからの広報施策に活かせるようにしたいと考えています。