経済警察委員会の視察で高知県と香川県を訪問しています。水曜日から金曜日までの三日間の日程で視察を行います。
初日の今日は高知県にある室戸ジオパークの視察です。高知県には高知龍馬空港から入りました。空港では坂本龍馬の像が迎えてくれました。空港内は龍馬を初め明治維新の志士の色が濃く、維新の風を感じられます。気持ちを整えると、土佐からこの国を改革しようとした若者達の息吹を今でも感じることができます。
坂本龍馬のほかにも中岡慎太郎、岩崎弥太郎などの人物を輩出した高知県は、郷土の偉人を誇りに思っていることが分かります。高知龍馬空港から室戸市に向かう道中、中岡慎太郎と岩崎弥太郎の記念館もあり、大切に思う気持ちが伝わってきます。
時代を進行させると吉田茂元首相や大平正芳元首相、相撲では横綱玉錦も輩出していることを地元の皆さんは良く知っていて、この偉人達も誇りに思っていることが分かります。
地元愛、郷土愛は県力を高める基になります。偉人を尊敬してそれを目指す、偉人を超えることを若い人たちが思い描くことが大きな力になるのです。今では地元だけでは飛び出すことは難しくなりましたが、東京に出て力を蓄え、また地元に戻って郷土のために尽くす人が地域を支えているようです。
さて坂本龍馬について資金面からの話を伺いました。坂本家は裕福な家庭で龍馬が江戸に出ている時には今の価値で言うと、毎月30万円の仕送りを受けていたようです。その支えがあって江戸で学ぶことができたのです。そして龍馬の船が瀬戸内海で沈んだ時に紀州藩から得た賠償金を基にして、岩崎弥太郎が事業に乗り出したことも話してくれました。何かを達するためには資金が必要です。資金がなければ世に出ることは容易ではありません。歴史もそれを教えてくれています。
さて室戸にある世界ジオパークですが2008年6月に室戸ジオパーク推進協議会を設立し、2011年9月に世界ジオパークに認定されています。ジオパークというと地質に特異性が必要なことは言うまでもありませんが、地質だけでは世界ジオパークに認定されないことを知りました。地質に加えてその地における人の営みや文化の物語性が必要だということです。他との違い、オリジナリティを主張しなければ世界ジオパークには認定されないようです。そして説明パンフレットや観光案内版は小学校高学年の子どもが理解できるような書き方をしなければなりません。専門用語や難しい言葉を書き並べても駄目なのです。地域が支えている世界ジオパークです。行政と専門家が支えているものではありません。地域の皆さんの日常生活と文化の中に世界ジオパークが存在している必要があるからです。
大学教授は教育を主張し、行政は観光を主張します。関る市民の皆さんは地元の商売につながることを期待います。関わる三者の意見を調整しながらの作業を行い世界ジオパークの認定を受けたようです。
世界ジオパークの室戸市である主張は、市役所や室戸岬を訪れるとよく分かります。世界ジオパークのまちを観光の売り物にしていますし、地元の誇りになっています。
室戸岬ではタービダイト層と呼ばれる地層を見せてもらいました。大昔の海底が隆起して海面から突出している地層で、泥と砂が入り混じった層を形成しています。泥の部分は黒色、砂の層は白い色をしていて、この配色が直線模様となっています。
現在世界ジオパークは国内に5箇所あります。また日本国内のジオパークに加盟しているのが25箇所、準備中が13箇所あります。地域の価値として、そして観光振興のためにジオパークを目指している地方自治体が増えているようです。
さて室戸岬には中岡慎太郎の像が立っています。室戸岬から太平洋を目指している姿と視線がとても凛々しいのです。像ですが維新を駆け抜けた一級の人物としての強い意思が心に直線的に伝わってきます。これを感じることができたことも収穫でした。
坂本龍馬と中岡慎太郎のことを話してくれた地元の人の次の言葉は印象的でした。「明治維新の夜明けを迎えたのは二人の死からわずか二十数日後のことでした」。二人は明治維新を知ることもなくこの世を去ったのです。それでも二人の視線の先には大きく広がる太平洋のように、新しい時代が広がっていることを分かっていたと思います。二人はそれを目指していたから維新の結果を知っていたと思うのです。
二人は明治維新後には存在していませんが、心の中で新しい時代は見えていたに違いありません。室戸岬と桂浜に立っている二人の像がそのことを示してくれています。