活動報告・レポート
2012年9月23日(日)
Tさん

Tさんと懇談しました。Tさんの生き方はとても前向きで、日頃から尊敬している方です。

前向きな理由は話しの内容にあります。自分に厳しく人に優しい話ばかりで、そして楽しさを感じさせてくれるからです。そんな話が何故できるのか、今日話し合って理由か分かりました。

一つ目の理由です。約40年の会社生活は現場での仕事が大半でした。現場の仕事は技術力もそうですが、人間関係がとても大切なのです。一人の技術で仕事ができないからです。人間関係を大切にしなければチームとしての仕事は完遂できません。チームの和がチーム全体の実力となるのでチームワークが最も大切なのです。

そんな現場経験を積んでいるから人の気持ちが分かり、そして時には自己を犠牲にしてでも仲間を助ける気持ちを持っています。

他人を思いやる気持ちが先にあるので、常に人に対しては前向きな話をしてくれるのです。約40年の経験が重みとなって言葉に表れています。同じ内容のことを言ってもTさん話には重みがあるのは現場で培った経験があるからです。

二つ目の理由です。現役を退いた今でも新しい知識を得た時は、今一緒に活動している仲間に伝えようとしてくれています。研修会や勉強会で得た知識の中から必要なことを仲間に話してくれます。その熱心な気持ちが伝わってくるのです。

私はこの二つの理由から来る前向きで明るいTさんの話を聴くのが大好きです。

しかし最近、少しトラブルがありました。トラブルの内容は省きますが、このトラブルに際してもTさんはとても自分に対して前向きな解決をしてくれました。

「トラブルが発生したのは相手への伝え方が正しくなかったことと相手の気持ちを理解していなかったことが原因です。私の実力と相手への理解不足が原因ですから、私が反省すれば解決する問題です」と話してくれたのです。

とても気持ちの良い解決方法です。念のために申し添えますが、私はTさんの伝え方が悪かったとは思いませんし、相手の気持ちを汲み取っていなかったとは思いません。それなのに当事者のTさんが自己反省をしてトラブルの原因を探って自分側の問題を分析していたのです。トラブルが発生した時、多くの場合は自分が正しくて相手に非を求めようとするものです。

「自分は悪くないのに相手が自分の言い分を理解していないだけだ」だとか、「相手が不当なことを言うので私には何も落ち度がない」と思うのです。

ところがトラブルの原因は当事者間の双方にあるのです。言葉の行き違いや感じ方、考え方の違いからトラブルは発生します。何には詐欺のような話はありますが、それは論外なのでここでは割愛します。

そんな中、自己に原因があるとして反省し、相手を非難しない姿勢は清らかで見習うべき姿勢です。

「相手の正確や気持ちを考えると自分の取った態度はいけなかった」と話してくれました。私は決してそればかりではないと考えますが、原因を自分に求められる人は尊敬できますし素敵な人生を過ごせます。

約1時間でしたが心が洗われるような時間でした。自分の中で原因を見つけられる人は同じ過ちを繰り返しませんし、接する人に学びを与えられる人です。

そし自宅でTさんが大事にしている宝物を見せてくれました。名古屋城にある金の鯱の飾り物です。これはTさんが現役時代、勤務している会社からトヨタ自動車に派遣された経験を持っていることから得た宝物です。自動車工場での仕事は初めてですし、トヨタ自動車の若い人は誰一人として知りませんから、経験のない仕事と人間関係が築けていないことから最初は溶け込むのにとても苦労したそうです。自動車の現場はそれまで経験したことがないので、年長者となるTさんでも教えることが見つからないで、逆に若い人に仕事を教えられる立場になったのです。

自分のこれまでの経験が役立たないことから辛いと感じたTさんですが、持ち前の明るさで若い人に仕事を教えてもらい、新たしい経験を積み重ねていきました。

そうした時間の経過と共に若い人との交流が生まれました。すっかり職場に慣れ、職場の若い人たちにも人生経験を伝えられるようになった時、派遣期間が満了し元の職場に戻ることになりました。一緒に働いた自動車工場の若い人たちがお別れの会を催してくれました。楽しくて、しかし別れの辛い酒を飲み交わし、そんな皆さんからのプレゼントが金の鯱の飾り物なのです。和歌山市に戻っても名古屋での仕事と生活を忘れないで欲しい、そして自分たちのことも忘れないで欲しいという思いが詰まった贈り物でした。

あれから何十年経過しているのでしょうか。今も大切に床の間に飾られています。そんな宝物を見せてもらいました。「片桐くんに見てもらいたかった」と話してくれたことは嬉しいことです。Tさんの経験話を受け取ってくれると感じてくれたからだと思います。Tさんとの今日の時間、そして二人の話を忘れることはありません。これからもご指導下さい。