活動報告・レポート
2012年8月28日(火)
委員会視察
委員会視察

経済警察委員会視察に向かいます。二日間の行程で和歌山県内を一周します。和歌山市から紀の川市に入り、午後からは橋本市、そのまま田辺市本宮まで向かいます。明日は本宮から新宮市に入り、太地町と串本町に入る予定です。昨年、紀伊半島を襲った台風12号被害からの復旧状況の調査を主として視察に入ります。

近畿大学

初日は近畿大学生物理工学部を訪問しました。ここでは先進医工学センターの視察と研究成果について意見交換をこない、施設も見せてもらいました。近畿大学のこの校舎内に入るのは初めてですが、とても学習環境が良く、大学としての研究成果をあげていることが分かりました。

研究成果は素晴らしく、知的財産の特許出願件数は平成22年度実績で98件あります。これは近畿では京都大学、大阪大学、大阪府立大学に続く4番目で、全国でも21番目となっています。また研究活動についても平成22年度実績では、近畿において大阪大学に次ぐ2番目となっています。民間企業や官公庁から多くの共同研究の依頼が来ています。近畿大学の研究力が企業から評価されていることを表しています。

生物理工学の研究について説明をいただいた後、意見交換の場がありました。質問をさせてもらいました。

ES細胞やクローンなどの繁殖生物学について研究されていますが、再生医療分野に応用できるまでの期間、つまり人間にとって有益な成果があるまで期間をどの程度だと見込んでいますか。

それに対しての考え方は次のようなものです。ES細胞とはあらゆる臓器の形を作る可能性を持つ細胞です。クローン個体の再生についての試みも行っています。人間のどの臓器を再生するのかによって実証までの期間は違うので一概には言えませんが、臓器によっては3年後だとか5年後に人体での再生が可能になると思います。

研究は多くの人が考えている以上に進んでいます。ただ実用に向けての課題があります。それは世論です。社会で受け入れられるかどうかが問題になりますし、研究の壁となっています。例えば肝臓細胞を再生できる技術が確立できたとします。研究室で培養した細胞を使えば再生できると分かっていても、それを受け入れる人がいるかどうかです。その人の価値観にもよりますし日本社会の価値観にも左右されます。社会的に人が開発した臓器を人体に受け入れることを良しとしない意見があがります。人道に反するだとか神の領域に人間が関与すべてきではないという問題提起です。世論によって研究成果が出たとしても人間に応用できない可能性があります。

クローン技術に関しても同じです。社会が受け入れてくれるかどうかが問題になります。

臓器再生のマーケットが社会から受け入れられ存在することになるかどうかは分かりません。研究とマーケットの間に大きな壁があり、その架け橋になれるのが政治です。政治で決定してもらえると研究成果が再生医療で応用できるのです。

科学が前に行くと人はどのように思うかは分かりません。科学と倫理観の対立、または科学と宗教との対立が予想されます。どこまで行っても両者の価値観は交わらないので、最終決定は政治の力によります。市場の反応や社会世論によって再生医療が実現の可否が決ります。意見が対立している価値観をコーディネートまたは両者の意見を翻訳して結論を導くのが政治の役割です。

政治の力が研究成果を市場にできるかどうかを決定するのです。最終判断を下し決めるのが政治なのです。決められないのは政治ではありません。政治が決められるのか有権者の代表者が集まって議論した中から結果を出せるからです。再生医療の問題からエネルギーや外交問題も含めて政治が決定すべきものだということを再認識できます。

科学と世論は時々対立するものです。特にそれまでの常識を超える科学技術に対しては、人は不安感に基づいて危険視しますから、簡単に受け入れてくれないのです。人は自分の常識を超える問題に関しては、自分の中にその問題を解釈する定規がない状態ですから判断できないのです。拠り所はマスコミなどの情報になります。マスコミがどちらに賛成するかどうかに再生医療の実用化が懸かっているような気もします。

ところで研究したものが実用化できる率は100件の研究に対して1程度だそうです。企業のニーズがあったもので共同研究をしてもこの程度です。行政機関との研究開発に関しての比率はもっと低下します。企業の研究開発よりも、もっと実用化できる率が低くなるのです。それだけの研究を重ねて大多数の人にとって有益なものとして実用化が図れるものに関しては、社会が受け入れるべきです。

近畿大学

近畿大学は、研究と現場は一体のものだという精神を持っています。研究した成果が社会で役に立たないものは研究する価値はないということです。社会で役に立つものを目指して研究しているのですから多くの成果を生み出して社会で市場として表れることを期待しています。

なお視察したセンターでは人工授精やオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を組み込んだマウスなどを見せてもらいました。このオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子は2008年度にノーベル賞を受賞した下村脩博士が発見したものを活用しています。目と尻尾が光るマウスは衝撃でした。

日進化学株式会社

続いて橋本市にある日進化学株式会社を訪問しました。橋本工場は平成24年5月に竣工した工場で、和歌山県内進出をしてくれた企業です。社長から和歌山県内に立地するに際しての意見を頂戴しました。いずれの要望も尤もなことで、対応できてないことが行政の問題です。

  • 工業用水がないこと。つまり高い水道料金を負担してくれています。橋本市の場合、日量450トン以上使用するのであれば工業用水としてくれますが、それ未満だと上水となります。工業用水の単価は1トン当り97円ですが、上水の単価は1トン当り178円となります。工場でこれだけ高い水道料金を負担して稼動してくれているのです。同業者からは「それだけ高い水道料金でやっていけるね」と言われています。
    工場にはきれいな水は絶対不可欠なものです。水の供給ができない工業団地には進出することはありません。尤も通常は水を供給できない工業団地は存在しない筈です。橋本市のこの用地の場合も「豊富な水かあります」が謳い文句です。豊富な水があるのですが高い上水だということです。
    参考までに日進科学橋本工場の水の使用量は日量約25トンとなっています。日量450トンも使用する工場は滅多にないということです。
    但し、工業用水の配管をこの場所まで敷設することはコスト的に困難なので、工業用水扱いに準じる取り扱いはできないものか。県と市で一部負担できないものか検討してもらいたいと考えています。水の単価が高くて競争力で劣ることになれば、これも理由で和歌山県内の企業立地が難しくなります。解決を図りたい問題です。
  • 公共交通機関がないこと。公共交通がないので従業員はどうしても自動車通勤になります。自動車通勤に限定されると雇用などの面で問題があります。自動車に乗れる人が採用条件となりますから、優秀であっても雇用できない場合が出てきます。
    また東京からのお客さんが多く視察や打ち合わせに来てもらった時、JRや南海電鉄橋本駅から工場までの移動手段がないのです。ですから駅からタクシーで来てもらう以外にないので遠くからのお客さんに不親切な場所です。
  • 最寄の駅や主要道路から工業団地までの案内板がないので、初めてのお客さんや取引先の人は迷います。何度も場所の確認があるなどその都度対応しているところです。案内板は必要です。
  • 立地的に物流コストが高くなります。製品の多くは首都圏向けですから、どうしてもコスト高になるので、交通手段の良い場所にある工業との価格競争では不利になります。物流コストを勘案した土地代金にする必要があります。

以上のような課題があります。これから和歌山県内への企業立地を図るためには、これらの課題を解決しておく必要があります。企業立地と協議したいと考えています。

世界遺産熊野本宮館

この後、橋本市から本宮まで移動して世界遺産熊野本宮館を訪問しました。この施設も昨年秋の台風12号の被害に遭い、開店できない状態になっていて、現在は基礎からやり直しています。今年中または平成25年1月にはオープンするように工事が進められています。