夏の電力不足を受けて皆さんから意見をいただいています。今年の夏には間に合いませんが、夏の電力をピークカットするために再生可能エネルギーの導入についての賛成意見が多く寄せられています。
二人の経営者から工場の屋根に太陽光発電設備を設置したいという依頼があり、関係者と共に調査に入りました。これは夏の電力不足に対応するための自衛手段です。狙いの一つは太陽光発電によって得られた電気を工場内で使用すること、もう一つは太陽光パネルを屋上に設置することで工場内の温度が低くなり、冷房需要を抑えられる効果があることです。電力不足のために節電を心掛けてくれている経営者は多いのですが、既に節電対策や省エネルギー対策は出来る限りの手段を講じている会社が多く、夏の電力を15パーセント削減するためにこれ以上の取り組みはできないと考えています。
これらの工場はエコアクション21の認定を受けている工場であり、既に相当の節電対策を行っています。そのため今年の夏を迎える前に、太陽光発電設備を屋根に敷き詰め節電と省エネルギーに対応しようとしているのです。
敷地内の三箇所の屋根に太陽光パネルを敷き詰める計画を話し合いました。図面を確認したので後は現場調査と施工などの段取りに入ります。計画が順調にいっても約7週間は必要となります。何とか夏に間に合うぎりぎりのタイミングとなっています。
もう一つの会社を訪ねた理由も同じです。この経営者も夏の電力不足に対応することを考え、電気が不足しても従業員ができるだけ快適に仕事ができる環境を保つために太陽光パネルを工場の屋根に設置しようと考えています。南向きであり屋根の広さについての問題はありませんが、一つだけ問題がありました。それは工場が海岸に接した場所にあるため塩が太陽光パネルに付着する恐れがあるのです。塩が太陽光パネルに付着すると発電効率が低下しますし、場合によっては発電しない恐れもあります。
またメーカーの保障が得られない場合、設置することはリスクが伴います。投資をして太陽光発電を導入したのに計算値通りの効果が得られなければ、投資額の回収も節電効果も得られなくなるからです。この課題についてメーカーと協議をすることにしました。メーカーへの保証が得られなければ海岸部の工場で太陽光パネルの設置は出来なくなります。海岸部に立地している工場がある和歌山県としては問題となります。早期にメーカーとの協議を行い課題解決に努めることを確認しました。
そして内陸部の現地調査も行いました。内陸部の用地を調査した結果、南向きの斜面などは利用できると思いますが、南向きの面積が広い、周囲に工作物が少なく影を落とさないなどの条件を満たしている場所は以外と多くありません。関係者によると、「太陽光発電に最適な全ての条件を満たしている場所はないと思います。太陽光発電設置に不足する条件をどう克服して設置するのかが問題で、この問題を解決していくのが専門家の役割です」と話してくれました。
ただ和歌山県は、太陽光発電が設置できる条件に恵まれている地域であることは間違いありません。後は行政機関の姿勢です。積極的な首長がいる市町は前向きに進みますし、消極的な首長がいる市町では決して進みません。
再生可能エネルギーの買い取り単価は太陽光発電の場合は1kWh当り42円だと言われていますが、その買い取り単価で固定されるのは、平成24年度に主要設備の設置が完了した場合に限られます。ですから平成24年度中に完成しないと見込まれる場所は、平成25年度以降、事業者が進出してくれる可能性は低くなります。現在の価値と比較して平成25年度になると太陽光発電事業に関る土地の価値は低下することになります。地方自治体として早期に誘致の姿勢を取らなければ、ゆっくりと構えていると事業機会を失うことになります。
また太陽光発電設備で賃料を得ようとする地主が幻想を描いていると計画は進展しません。それはビルや駐車場を建設するのと同じ程度の家賃が得られると思っている人がいるからです。太陽光発電の家賃で、商業施設や駐車場並みの家賃収入が得られることはありません。今まで活用ができなかった土地ですから、高い値段で賃貸借契約をしてくれる筈はないのです。
今日の訪問した経営者のように、「設置に関する家賃はただでも良い」と思う人でなければ事業化は進展しないのです。投資する人がリスクを取る変わりにそれなりの収益を受け取るのは当然のことです。投資をしない人が甘い誘いによって利益を受け取ることはないのです。
最後に訪問した会社経営者の姿勢に接した調査会社の人が、次のような発言をしてくれました。「姿勢が柔らかくて人当たりが良い、そして親しみ易くて、儲け話に拘ることもなく素晴らしい経営者です。このような人が地域をリードしてくれるのだと思います」という意見です。本当にその通りです。人は会ってみると、人柄や雰囲気から資質が分かるものです。