二日目の研修は世界文化遺産の視察によって観光への取り組みについて学びました。視察したのは広島県宮島にある厳島神社です。今年のNHK大河ドラマでの主人公である平清盛が造営したのがこの厳島神社です。大河ドラマの影響と世界文化遺産に登録されていることから平日にも関らず大勢の観光客が訪れていました。勿論、外国からのお客さんもたくさん訪れている光景がありました。観光表記は英語、中国語、韓国語があり、流石、世界文化遺産の観光地であることが分かります。
さて厳島神社が創建されたのは593年のことだと言われています。今年の大河ドラマの舞台である平安時代後期1168年に平清盛が現在のような廻廊で結ばれた海上社殿を造営しています。平清盛が造営したのは、同氏が高野山を訪れた時に出会った僧侶から、厳島神社を造営すれば地位を得られると言われたことが原因であったと伺いました。武士が天下をとり政治を始めたのですが、ここに平安を願い神の地であった宮島の厳島神社を造営することになったのです。
その姿は極楽をイメージしています。この世で極楽を見られるように、この神の島でそれを表現したのです。京を拠点としていた平清盛が宮島に来るためには当時、一週間を要したそうです。平清盛は何度もこの厳島神社を訪れています。恐らく平家の権力の象徴であると共に神を崇拝していたこと、能楽などの京文化を取り入れていることから武士が公家から見下げられないようなしくみを作っています。
もうひとつ歴史の側面があります。言うまでもなく時代背景はお金の流れを見ること、知ることが視点として大切なことです。平清盛の力の源泉となっていたのが宋との貿易、所謂、日宋貿易によって獲得した資金です。その日宋貿易を更に拡大しようとした平清盛にとって厳島神社は日宋貿易航路の拠点となったのです。ここで、今で言うところの通行税を航行する船舶から徴収し、資金を蓄えると共に力を増大させていったのです。当時は貿易税という観念はありませんでしたが、平清盛が貿易から税を取ることを考えたのです。
何時の時代も力の源泉は資金です。歴史の本当の姿を知るためには資金の流れを知ることから始まります。誰が権力者に資金を提供しているのか。権力者が資金を得るためにどんな行動をしているのか。そして外国の動きはどうであったかを調査することが重要な視点です。ところが資金の流れは歴史には出てきません。常に裏に隠された歴史ですから知ることは困難です。単に一人の人物や限られた範囲の歴史を学ぶだけでは資金の流れを推理、把握することはできません。権力を握る者は常に資金の流れを握っていることは忘れてはいけないことです。
さて権力を得た平清盛が残した厳島神社は他に類を見ないその姿の美しさ、時間によって表情を変える光景を現代に残してくれています。厳島神社が宮島に存在しているという歴史に感謝したくなります。
潮が引いている時の姿は人が神を崇拝する所謂、神社であり、潮が満ちている時の姿は神と対話できるような姿に感じます。この場所に神社を構えた発想力、海に浮かぶ神社を支える技術力には驚かされます。
ところで平成24年4月3日の暴風のため大鳥居は修繕作業を行っているため、その本来の姿を観ることはできません。説明によるとこの大鳥居は平安時代に建立され、現在のものは明治8年に再建された8代目の大鳥居となっています。長い歴史の中で大鳥居が修繕された期間は短いものです。つまり修繕中の大鳥居を見ることの方が少ないのです。そんな貴重な光景を見られたことは幸運でした。
平清盛の歴史の中での役割を学び、そしてその権力の象徴である厳島神社を見ることができました。その姿の美しさ、歴史の中で耐えてきた光景、神が宿る島に入れたことなど、観光を学ぶ上で大切なことを得ることができました。観光には施設やおもてなしのきれいさが必要であり、歴史そのものが必要なこと、そして物語として伝えられていること、物語として話せることが大切なのです。