活動報告・レポート
2012年5月6日(日)
金融ワンワールド

平成24年4月30日に発刊された「金融ワンワールド」。著者の落合莞爾先生と金融論について議論、と言うよりも教えてもらいました。話し合った時間は実に8時間です。平日だと中々時間が取れないので、今日の機会は大型連休の最終日が与えてくれたプレゼントです。落合先生も歓迎してくれて講義をするように金融の歴史としくもみについて教えてくれました。

さて「金融ワンワールド」は読んで理解するのは難解な内容です。基本的な金融の基礎知識だけではなくて歴史上の出来事の背景も知っておく必要があるからです。基礎知識がなければ話しを伺っても理解できませんし、また単なる金融の歴史を知っているだけでも理解できない内容です。ですから落合先生も基礎知識を有していないと判断した場合は、話の途中であってもそこで話を打ち切ります。「もっと勉強してから出直しなさい」と言われることになります。話を聞かせてもらうと言うことは、著者である先生の貴重な時間を頂戴する訳ですから、「何も知らないので教えて下さい」という態度ではいけません。最低一読し、自分が理解したことについて議論で論点を深めること、そして読んだだけでは理解できない疑問点について質疑を交わすことが必要となります。

幸い、この分野に関する歴史的背景や本質的な予備知識はあると思っているので、議論を深めることが出来ました。先生から「そのことをどうして知っているのか」、「どこで知りえたのか。二人だけなので明かして欲しい」という質問があった時は、嬉しくなりました。何故なら、落合先生と部分的にせよ議論できる人は少ないことを知っているからです。

「このことの出典はここにあります」という答えを返すと、納得した表情で「その通りですね」と言ってくれた場面もあり、一層議論は深まりました。如何に議論をする前提が大事であることを再認識することができました。

私ごときが書評をすることはできませんから、書に無い部分で興味深い論点を記します。私の感じたことの記述であり、落合先生の著書からの引用ではないのでご理解下さい。

欧州で起きた産業革命以降、文明の発信地は欧州が中心となっています。日本もその文明の中に組み込まれていることから、インフラ整備や物を作ることにおいて欧州よりも遅れ、どうしても欧州の文明よりも遅れているように思っています。ところが産業革命以降欧州が世界をリードしているのは物づくりであり文化ではないのです。

文化面では日本が欧州をリードしてきた歴史があります。例えば欧州の王族は日本で言うところの荘園を持っていたことから小さな単位の領土が点在し、国王と言っても小さな王の存在もあったのです。日本人が思う王様は国を支配する国王ですが、荘園の領主であるなど決して巨大な力を所持していた存在ではなかったのです。産業革命でこうした過去の文化である荘園は消え、統一されて近代化国家となったのです。

ところが日本では平安時代にあった荘園は鎌倉幕府によって統一され国家の形式を整えています。鎌倉時代にはもう国という文化の基礎が完成していたのです。

つまり文化では日本>欧州。現代文明では日本<欧州。という形が世界史なのです。この文化と文明は並び立つことは難しく、文明を推し進めると文化は縮小し、文化を維持しようとすると文明の発展は阻害されます。文化の維持にはお金が必要ですが、文明的発展を進めようとすると文化にお金を掛けることが無駄に思えます。国家、地方自治体がこの二つを両立させることは案外難しい課題なのです。ですから各論に入ると衝突が発生することが多々あるのです。

ところで産業革命の本質を理解するには金融を理解しなければなりません。産業革命が文明になったのは物の発明にあります。ところがどれだけ素晴らしい物が発明されても、資金がなければ発明品が広がることはありません。産業革命には資金の道が必要だったのです。物を作ってもお金の道がなければ物は流通しないのです。「この発明品は便利なものですから無料でこの物を使って下さい」と資本家が言うことはありません。従って物の交換の手段としてお金の道ができることになります。何かの作用を促す存在、見えないエネルギーがお金という紙、つまりお金とは情報そのものなのです。

通常お金とは信用と考えますが、信用に加えて情報という要素もあるのです。お金は信用情報という存在なのです。

もっと分かり易く言うとお金とは媒介手段であり、会社における伝票のような存在です。

会社も経理がありますから大企業の場合、物を動かす場合は伝票を発行します。この伝票を動かすことによって品物が動きます。経理上、伝票が発行されていないのに品物だけが動くことはありません。この組織における伝票が国家間の取引になるとお金になります。

このように金融を支配するものが物を支配するものの上に存在している世界が金融ワンワールドなのです。この金融ワンワールドのシステムは一つでつながっています。どこかの国家がつながっていなければ、その国家は世界の国からの取引対象となりません。お金を使わないで取引ができる例外として、その国が貴重な資源を持っているなどの場合、物々交換という手段がありますが、物を交換するよりもお金を媒介させた方が便利ですし、後に何にでも変えることや富を貯めることができますから、現代国家間において物々交換を選択する方法は余り考えられません。

つまり現代人は金融ワンワールドの世界を生きていることを知り、その法則に則り経済活動をすることが有利なのです。