平成23年9月の台風12号の影響を受けて紀伊半島を観光で訪れるお客さんが減少しています。台風直後と比較すると増加傾向にありますが、まだお客さんは完全に戻っていません。特に首都圏の方は、「和歌山県は台風の影響で電車などが止まっているでしょう」などの意見があり、観光に関しても復興途上のように思われているようです。
白浜町は台風12号の被害を直接的には受けていないのですが、同様に思われているようでお客さんが減少しています。昨年は和歌山県に対して和歌山県の観光は大丈夫だということの発信を依頼し、県もそれに応えて首都圏に情報発信をしています。それでお客さんは幾分戻っていますが、観光情報を発信し続けなければ首都圏の方へ浸透しません。
今春から5月の大型連休に至るまで、全国規模の観光設備が登場しますから、和歌山県の観光にとっては脅威です。言うまでもなく、4月は京都の水族館、5月からは東京のスカイツリーと墨田水族館、そして東日本大震災以降、再び来場者を伸ばしている東京ディズニーランド、大阪ではユニバーサルシティが元気です。九州は一丸となって九州新幹線のキャンペーンを行い全土でお客さんを集めています。そこにハウステンボスは上海と客船を就航させて中国からのお客さんを迎え入れています。
このように地域限定の観光ではなくて、全国からお客さんを呼びこめる大規模な観光施設が登場しています。和歌山県の観光施設で新たに集客できる規模のものはなく、従来と同じ観光商品で勝負をしなければなりません。今春からはかなり厳しい誘客となっています。
白浜町と言えばパンダです。白浜町のアドベンチャーワールドには8頭のパンダがいます。世界でも類を見ないもので、大きな観光の柱になっています。上野動物園のパンダは2頭ですが、それを大きく上回るパンダがいるのです。上野動物園の来場者は年間約280万人だったことから、目標として300万人を掲げていました。ところがパンダが登場して以降お客さんが増加し、平成23年度は約450万人のお客さんを迎えています。パンダの集客力は凄まじいものがあります。
それに対して白浜町のパンダは首都圏で知られていない様子もあると聞きました。横浜市に親戚のいる方が、「和歌山県の白浜町においでよ。パンダがいるよ」と伝えたところ、「和歌山県にパンダがいる訳ないでしょう」と信用してもらえなかったという笑えない話があります。それだけ首都圏での認知度は低いのです。
「もっとパンダを活用した観光施策をして欲しい」、「パンダが8頭もいるのだからもっとお客さんを呼び込めると思う」などの地元からの意見を聞かせてもらいました。民間施設にパンダがいることは珍しいことで、和歌山県としてその価値を認識して自信を持ってアピールしたいものです。
問題は東京羽田と白浜空港との旅客運賃の高さです。往復45,000円も旅費がいると、東京からは白浜町に来ないで、韓国や台湾を選択する人が多くなります。JALツアーでは22,000円の商品があると聞いていますが、価格面で首都圏から観光客を呼び込める構造になっていないのです。
折角いるパンダを和歌山県の観光の売り物として、もっと全国に情報発信を行いたいものです。ところで紀伊半島は近畿で春に一番近い地域です。もう桜の花が咲き始めています。
白浜町でもバリアフリーツアーを企画している事業者がいます。会社設立を行っているところで、もう直ぐ田辺市に本社を置く会社が誕生します。この会社ではクルーザーを二艘用意して、障がい者や高齢者の方に白浜町の海を楽しんでもらえるツアーを企画しています。
一般的にクルーザーで海に出る機会はそれ程多くはなく、和歌山県内各地からのお客さんや東京から飛行機で来てくれるお客さんを迎えたいとしています。丁度和歌山市内でもバリアフリーツアーの企画をしているので、旅行の行動範囲が広がることを期待しています。同じ時期に会社が設立されて活動に入ろうとしていることもご縁を感じます。