活動報告・レポート
2012年3月29日(木)
被災地視察

最初に東牟婁振興局を訪ねました。台風12号対策に直接携わった東牟婁振興局から、当時の状況の聞き取りを行い、そして復旧現場に赴きました。平成23年9月4日に紀伊半島を襲った台風12号の被害の凄さは言うまでもありませんが、当時の熊野川の濁流が海に流れ出す写真を見ると、改めて豪雨であったことが分かります。古座川を初めとする地域では、年間降雨量の半分程度の雨が集中して降りました。その結果、新宮市では死者13名、行方不明者1名、那智勝浦町では死者28名、行方不明者1名、古座川町では死者2名が発生しました。床上、床下浸水の被害も相当数にのぼり、現在復旧作業に着手しています。

復旧に関わる土木工事は、道路、橋梁は100箇所で、予算金額は31億円、河川、砂防、海岸は98箇所で62億円、合計198箇所の93億円が現在、復旧作業に着手している、または着手しようとしている箇所数です。現時点で発注は約80パーセントで、その内60パーセントの工事事業者が決定しています。残りの20パーセントが入札不調となり契約が出来ていません。入札不調になっているのは主に河川工事に関してのものです。

東牟婁振興局管内の公共土木工事の予算は、年間約50億円の規模で、今回の台風12号被害による公共土木工事予算は約93億円ですから、通常の年間予算を大きく上回っています。そのため管内の事業者で取り扱えない工事規模になっているのです。

東牟婁郡の地場産業はなく、どちらかと言うと公共工事が地場産業になっています。しかし公共工事の規模が年々減少していること、最盛期の半分位の規模になっていることから、事業者の減少と作業員の高齢化によって今回のような規模の仕事を請け負い切れないのです。

そこに公共工事の入札のルールに基づいているので入札が不調になっているケースが発生しているのです。予算額が2,000万円以下の場合は管内事業者が入札参加対象となっています。2,000万円を超える工事だとお隣の串本町の事業者も入札参加対象となります。5,000万円を超える工事になると西牟婁振興局管内の事業所まで入札参加資格の対象となり、1億円を超える工事になると和歌山県全域が入札参加資格を得ることになります。

このように予算金額によって入札参加事業者が違っているので、地元事業者だけでは請け負い切れない状況になっています。そのため入札が不調に終わった工事案件に対しては、複数件名を組み合わせて予算額を大きくして入札に参加できる事業者を広げています。このようにしながら早期復旧を行う準備を進めています。

そして現場に赴きました。昨年の視察時よりも格段に整備は進んでいました。道路は開通し、河川の護岸の石も取り除かれている箇所が多くありました。倒壊した家屋は撤去され、更地になっている箇所もあります。このように災害の傷跡は残っているものの、復旧に向かっている様子が伺えました。

ただ那智側の支流である金山谷川の土砂の撤去は未だでしたし、川関橋もそのままの状態となっていました。金山谷川については平成24年度中に護岸を整える作業を行う予定で、川関橋の撤去も平成24年度に、新しい橋の完成が平成26年度を目途に進められる予定であることが分かりました。危険箇所を整えてから復旧工事に入ることになります。


そして那智勝浦町役場を訪ね、寺本町長に話を伺いました。台風12号の当日は深夜であり豪雨のため、土砂崩れや川の増水などは全く気づかない状態だったようです。上空から見たり離れた地域から見ると災害が襲ってくる状況は分かったと思いますが、被害地域の中にいると全く分からなかったようです。

また避難地域を定めていましたが、安全な避難場所ではなかったことが分かり、避難対策の前提が崩れ去って今います。そのため那智勝浦町の対策として那智側に三台のカメラを設置し流量の監視をすることにしています。和歌山県に対する要望は、雨量計を那智の滝の上部などに設置して欲しいこと。水量計も同様に設置して欲しいことがあります。

そして防災の考え方は、生命をどう守るのかが課題です。大災害の範囲に入る地域では財産は守りきれないので、まず生命を守るための避難を呼び掛けることが大事なことだと認識しています。地形の変化は自然の営みなので、崩れたり積もったりすることは長い歴史の中で繰り返されてきたことで、今の状態で変わらないでいることは考え難いことを前提として、自然災害の前では逃げるという行動を起こすことが対策となります。

那智勝浦町の土木、農地、水道、公共施設の被害額合計は、現在のところ約22億8千万円です。この金額は査定を受けたものだけで、査定を受けていないものが残っているので公共工事の積み残しがあります。追加の補助金がなければ復旧は難しいので、追加予算の配分を求めたいところです。

自身の自宅が全壊の被害を受けご家族も亡くしている寺本町長から当時の話と復旧に向けた取り組みを直接聞けました。直接聞けることで、これからの活動に活かせる重みが違ってきます。町長には長い懇談時間を取っていただき感謝しています。これからの復旧に向かって県と町が協力していくことの重要性を再認識しました。町の意思が伝わっていないこともあり、要望をしっかりと伝えたいと考えています。