和歌山雅楽による定期演奏会に行ってきました。毎年、お招きをいただき参加させてもらっているものですが、今年の演奏会には友人親子が初参加していることから、特に楽しみにしていました。先週会った時は「子どもと一緒に初参加です。緊張しています」と話してくれたように、大きな舞台を踏むのは大変な緊張感があります。日頃から練習を続けていてもやはり緊張感があります。最初の演奏会に参加していましたが、しっかりとした演奏だったように思います。
さて雅楽が語源となっている言葉を紹介してくれました。千秋楽という言葉は雅楽から生まれたものです。歌舞伎や相撲の公演の最終日のことを指しますが、元は仏教の法要で奉仕をする僧侶が、本堂から退堂する際に、最後に千秋楽を奏でたことから来ています。
その千秋楽の演奏もありました。そして歌詞のある雅楽の演奏もありました。「嘉辰、令月、歓無極、万歳千秋、楽未央」。この意味は、良き時節にあって、喜びは極まりなく、千年万年祝っても、その楽しみは尽きることがないというお祝いの言葉です。
春を迎えるこの時期、一年に一度の雅楽の演奏を楽しみました。
日赤病院にお見舞いに行きました。3月7日から入院をしているKさんを見舞いました。
ご家族に聞いたところ、今年の1月に入院をしたのですが一度退院し、再び、3月から入院をすることになったようです。そして1月に入院をした時から何も食べていないのです。健康状態が心配でしたが、お見舞いに行った時は、とても元気に話をしてくれました。ただ食べていないこと、水も飲んでいないことから、口の中が乾き舌も硬くなっているので話し難そうでした。舌が亀の甲のように硬くなっていて言葉の滑りが厳しそうでした。
本当に久し振りにお会いして話が交わさせたことを嬉しく思いました。Kさんの奥さんが「章浩くん?」と驚いてくれたように、小さい頃から可愛がってくれました。幼稚園の時は近所だったのですが、当時の我が家は引越しが多く、その後中々会えなくなりました。それでも活動を応援してくれていますし、今も二人から見ると、あの頃と同じ子どものように映っているようで、懐かしく嬉しく感じました。
Kさんのおばさんは話をしている途中、涙ぐんでくれたので、こちらも嬉しさが込み上げてきた程です。そして病床の中からKさんは「身体に気をつけてな。決して無理をしたら駄目ですよ」と伝えてくれました。病床の中から励ましてくれたのですが、どれだけ勇気づけられたことでしょうか。
状態はよくないので、一瞬、もしかしたら最後になるかもという思いが過ぎりましたが、大丈夫であることを信じています。長く生きていた。そのことが素晴らしい冒険であり、人生の輝きなのです。これまで生きてきた証が顔に刻まれています。幼い頃の私に戻った感じがあり、Kさんもあの頃と変わっていないように見えました。
懐かしい人、小さい頃を知ってくれている人が少なくなるのは辛いことです。こうして会うと、一人で大きくなったのではなかったことを改めて知ることができます。多くの人から育ててもらって、大事にしてもらって、心配してもらって、そして可愛がってもらって今の自分があるのです。
かつて現役バリバリだった大人が、人生という長い旅路の果てに辿り着こうとしています。そしてかつては小さい子どもであった私が現役世代として社会に立っています。社会を支え、次の世代を育て可愛がるというバトンを受け継いだことを感じます。
人はたくさんの愛情、微笑みを浴びて子ども時代を卒業します。それらの愛情や微笑の記憶は、地面の下の養分のような存在です。普段は忘れているのですが、いつまでも絶えることなく確かに私を育ててくれているのです。愛情や笑顔、撫でてくれた記憶、大事にしてもらった記憶などが、大切な養分として私の中に充満しています。幼い頃の記憶は枯れることのない養分として存在しています。
青々と茂った巨木のような存在が、少し身体が細くなり弱々しくなっています。命の輝きというか、生命そのものが奇跡であることを感じます。奇跡の存在である私達には、奇跡を起こせる力が宿っているのです。何もできなかった幼い日の自分が、少しだけですが何かに関われる存在になっています。それだけでも奇跡です。これからの軌跡はどうなるのか分かりませんが、人は奇跡の存在であることを忘れないで、多くの人に養分を提供できる存在でありたいと思います。大切な人にいただいたものは、大切な人に譲り渡すことが愛情を受けて育ててもらった人のやるべきことです。
社会の中心に存在している人は誰でも奇跡を起こせる力を持っています。そこにいる間に奇跡を起こさないでどうして生きていると言えるのでしょうか。
三田フォトクラブの写真展に行ってきました。今回で12回目を迎える写真展です。今回も会員の皆さんの力作が並んでいました。この展示会に備えて、毎年作品を誕生させているのです。色彩や構図に個性があり、多数並んでいても違いがあるのが楽しいのです。
そしてYさんの作品もありました。桜と朱色の塔を撮影したものですが、色鮮やかに春の喜びを感じさせてくれるものです。そのYさんが明後日から手術のため入院することになっています。直ぐに退院できると思いますが、Yさんの作成した写真集を会員の皆さんと共に拝見しました。最近の作品を中心とした作品集にはYさんからのメッセージが詰まっていました。Yさんが学生の頃、カメラは高級なもので、とても買えるものではなかったこと。知人から借りながら写真の世界に入っていったことを知りました。向陽高校では写真部を創設し和歌山大学でも写真部を創設させたのがYさんでした。
地元銀行に就職した時に初めて自分のカメラを購入したのです。価格は約15万円、当時の初任給が11万円だったことからすると、とても高級品だったことが分かります。以来約50年、写真を趣味にしています。人生の楽しみが写真だったとも言えるようなカメラとのつきあいです。
平成23年、バリ島への撮影旅行をしています。写真集には「これが最後の海外旅行になります」と書かれていたのが少し寂しい感じがしました。この写真展ではそのバリ島の作品が展示されています。生きるための祈りを感じさせてくれる作品となっています。生きている瞬間を切り取ったこの作品はYさんから私達へのメッセージのようです。