福祉の仕事に従事している方の給与が低いことが問題になっています。そして問題なのは大阪の福祉施設と比較すると月額にして最大約3万円も違う場合があると聞きました。そのためヘルパー希望の若い人が和歌山市内の福祉施設で就職しないで大阪まで行っている現状があると話してくれました。業種間と地域間の賃金格差を解消しなれば、これからも若い人の流失が続きます。しかし従業員の給与を上げることは容易ではありません。経営に関わる問題だからです。人件費率を高めるか入居者の負担金を上げるかのどちらかになります。国の負担金を増額する方法もありますが、それをしていると何時まで経っても補助金頼りの経営となり福祉職場の課題は解決することになりません。
平成24年に完成予定の某福祉施設では50人の雇用を予定しているのですが、若い人が集まらないと困っています。専門学校、養成学校などに依頼をしても、大阪への就職を希望するそうです。同じ仕事内容なのに給与に差があるからです。
職場として魅力のあるものにするためには、自立したある程度の給与水準が必要です。福祉職場で働き続けて所帯が維持できる、将来の生活設計ができる環境になった時、和歌山市内の福祉職場に若い人が戻ってくると思います。
道路にLEDの電光掲示板を設置して、市の防災対策として活用することについて協議をしました。道路標識のようなものですが文字が流れるので、意識がそちらに向け易い利点があります。問題は設置コストです。簡易なもので180万円、表示できる文字数が多くなると450万円が必要となりますから、誰が費用負担をするのかが問題です。
再度話し合うことにして会合を終えました。
和歌山県地震・防災対策総点検専門家会議に出席しました。この会議は和歌山県の防災対策の方向付けを行う重要な会議体です。県は知事、副知事以下、関係する部長が出席。座長はわが国の防災対策の第一人者の河田恵昭先生、和歌山工業高等専門学校の小池信昭先生、京都大学防災研究所巨大災害研究センターの牧紀男先生が委員として出席してくれました。防災対策の方向性を決める内容の濃い会議でした。
短期的な対策として、避難場所の見直しと緊急点検を行っています。緊急避難レベルを定め、県民の皆さんに適切に避難行動を促すものです。
緊急避難レベル1は、浸水の危険性のある地域に、時間的にレベル2またはレベル3の緊急避難先に避難する余裕がない場合に対応するために緊急避難先として指定している場所です。津波浸水予測値域内の津波避難ビルなどがこの避難先に該当します。
緊急避難レベル2は、浸水予測近接地域に、レベル3の緊急避難先に避難する余裕がない場合に対応するために緊急避難先として指定している場所です。
緊急避難レベル3は、浸水の危険性がない地域に、より標高が高く、より離れた安全な場所指定する場所です。
緊急避難レベル3の指定場所は567箇所、緊急避難レベル2の指定場所は484箇所、そして緊急避難レベル1の指定場所は286箇所となりました。平成23年8月末現在で、合計1,337箇所の緊急避難先を指定しました。
また県立学校の耐震化は平成25年度までに100パーセント完了を、市町村立学校の耐震化は平成22年4月末現在で73.7パーセント、災害拠点病院・災害支援病院も平成25年度までに100パーセント耐震化完了を予定しています。
そして被害想定の見直しです。大阪府では被害想定を従来の2倍に引き上げて防災計画を策定することにしていますが、これには根拠があることが分かりました。これまで想定していた大阪府での地震の大きさはマグニチュード8.4でした。これを東日本大震災と同等のマグニチュード9.0に引き上げるとしたら、津波の高さは2.25倍になるのです。ですから約2倍の想定を前提にして防災対策を検討しているのです。
これを和歌山県に当てはめると、従来の地震の大きさはマグニチュード8.6ですから、マグニチュード9.0とすると1.7倍になります。和歌山県の場合は想定規模を1.7倍にして検討をすれば良いと考えられます。国の中央防災会議の被害想定が示されていない段階においては、この1.7倍の被害想定を元に防災計画を策定すべきなのです。但し、地理的に入り組んでいる地域、平野が狭い地域では、これよりも大きな数字となるのは当然のことです。
関西広域連合として共同で被害想定をすることに関しては、是非共同ですべきだと結論を得ました。それは和歌山県単独で被害想定を検討しても、全体の想定被害が分からないので、和歌山県の被害想定を誤る恐れがあるからです。大阪府と兵庫県と共同で被害想定をした場合、大阪湾の状況、瀬戸内海の状況が分かるので、その揺れ戻しも和歌山県の被害想定に組み込むことが可能です。被害想定の精度を高めるためには関西広域連合と無縁ではいられないのです。
そしてハード対策です。東南海・南海地震は、第一波から第六波まで6時間継続すると予想されています。ハード対策としては第一波でゲートや水門が壊れないように補強しておくことが求められます。第一波で水門などが壊れてしまうと、後の津波対応が全くなくなるからです。簡単に壊れないように補強が必要ですが、このハード整備は国策として取り組むべきものです。新規対策も大切ですが、既にある津波対策設備を構造的に強化することが重要です。
ドイツのハンブルクの事例紹介がありました。津波被害の予想される地域の病院やビルを建設する場合、盛り土をするか、一階を駐車場にするか、一階部分の窓やドアに鉄の扉を設置することが定められています。鉄の扉は潜水艦のハッチのようなイメージのもので、緊急時に閉じられるようにしています。和歌山県でも海南市民病院が津波想定区域に建設される計画があります。建設場所の変更は困難ですから、せめてハンブルクの事例を参考にした安全対策も検討の余地があります。
役所と病院は震災と津波から守るべき建物です。司令塔と医療施設が破壊されるようでは、津波対策が講じられないからです。
もうひとつ重要なことは、東南海・南海地震の場合、住宅も壊れる恐れがあり、その後に津波が襲ってくることです。東日本大震災の場合は、地震での家屋倒壊はありませんでした。しかし和歌山県の場合は、震源地が近く家屋倒壊と津波の両方に備える必要があるのです。家屋の転倒防止、室内対策、そして津波からの避難を検討すべきなのです。ここが東日本大震災と東南海・南海地震の違うところです。
次に要支援者対策です。要支援者を救う対策は地域によっては難しいことが分かりました。例えば串本町には地震発生から6分後に津波が到来しますし、新宮市の場合は10分後です。揺れは3分間あるとして、避難に向けて動ける時間は串本町の場合は3分間、新宮市の場合でも7分間です。この短時間に避難支援者が要支援者の様子を見て救助できるかと言われると、とても難しいと言わざるを得ません。避難支援者も巻き添えにする危険性もあるので、現実的には要支援者を守れないのです。では救う方法はあるのでしょうか。
守れないとすれば高台の住居を移ってもらうこと、新しい福祉施設は高台に建設を促すことなどが対策として考えられることです。生命を守れないのであれば、安全な場所に移って住んでもらうことが生命を守るために必要な対策です。打ち出し方が難しい問題ですが、生命を守るために厳しい選択肢を提示すべきかも知れません。
最後に学校教育における防災教育です。毎年同じことを繰り返していても、防災について学ぶことはできません。基礎的な知識を教える定番メニューと高学年になるに連れて知識を高度化させるための進化メニューが必要です。生徒にどこまでの知識を与えるべきか、明確な目標が必要です。
そして避難所になる学校そのものの問題があります。避難所として学校を使うことによって、授業の再開が遅れることになります。授業が遅れることは勉強ができないので、他の域の学校と比較して遅れることになります。勉強ができない環境が何ヶ月も続くようだと、家族で引っ越しすることになります。それでは地域の復興はありません。人がいない地域が復興することはなのいです。このことも考えておきたい課題です。
以上が概略です。真剣勝負の研ぎ澄まされた防災専門家会議でした。高度な見解が示され、学ぶべきことがたくさんありました。
- 今は使われることが少なくなった旧県道の取り扱いについて協議するため、現場に出掛けました。大阪府との県境にある大川峠近くの旧県道ですが、暴走族が走りに来たり、ゴミが放置されるなど自然環境が荒らされるため、通れないように閉鎖することを検討しています。今日協議した方の意向に沿って閉鎖する方向で協議を進めます。
- 和歌山南インターチェンジの設置に付随して、和歌山県が誇る遺跡のある紀伊風土記の丘のある岩橋地域と、岡崎を道路でつなげる提案をいただきました。同南インターチェンジの降り口である岡崎からは国の名勝指定の和歌の浦が近くなりますし、紀伊風土記の丘と和歌の浦が道路で結ばれ時間距離が短くなると、新しい観光ルートとなります。南インターチェンジの計画がある訳ですから、同時に検討できないものか協議をしたいと考えています。