青少年の健全育成に関わるNPO法人の活動について協議しました。今月中に被災地から和歌山市へ避難してきている方の支援を行うことに決定しました。この被災者ご夫婦は、和歌山市の公営住宅で暮らしていて、来月奥さんが出産する予定です。しかし知り合いが無く不安のある中、そして知らない土地での初めての出産となります。和歌山市が温かいまちであることと思ってもらえるように支援をしていますが、この出産に関しても全面的に支援をすることにしています。
東北から来た被災者にやさしいまちであると思ってもらいたい理由があります。和歌山市に来たご縁で、ご主人さんは出来たら和歌山市内で仕事をしたいと思ってくれているからです。出産と仕事を和歌山市で提供ができたら定住してくれます。民間の力で一つの家庭を守りたいものです。
突然お亡くなりになった経営者の自宅を訪ねたところ、奥さんが気持ちよく迎えてくれました。創業者をなくした会社ですが、よくやく落ち着きを取り戻しています。株主総会を終えて新しい体制でスタートを切っています。亡き社長が支援してくれているように、仏壇の前で微笑んでいました。
奥さんはそれまで会社経営に関わっていなかったため、従業員さんのことを余り知りませんでした。そこで毎日二通程度、直筆の挨拶の手紙を従業員さん一人ひとりに出しています。多すぎて一度に出せないのですが、その分気持ちを込めて書いているのです。
奥さんは「社員の皆さんに今まで通りに気持ちよく仕事をしてもらうことが私の役割です。社長が育ててきた会社を立派に守り抜くためには社員さんが大切です。私は今まで会社に入りませんでした。それは社長がいたからです。しかしこれから社員さんを守らなければなりません。しかし社員さんと私との間に距離があることを感じます。社員さんから距離を縮めてくれることを待っていては駄目だと思います。そこで私から心の距離を縮めるために手紙を書いているのです。少しでも私の気持ちを理解してくれたらと思っています」と話してくれました。一人ひとりに出した手紙を受け取った従業員さんは、奥さんの気持ちを受け取ってくれる筈です。そして距離感は小さくなると思います。会社を守り、従業員さんを守ることは大変難しいことですが、先代が築いた組織を守って欲しいものです。その手段が気持ちを伝えること、心理的距離を縮めることなのです。きっと理解してくれると思います。
続いてIさん。1年半の闘病生活の末、お亡くなりになりました。肺癌が死亡原因でした。奥さんと話をさせてもらいました。「とても良い人生だったと思います。やり残したことはないと思います。皆さんに支えられて会社生活も退職後も満足できる環境でした。そして闘病生活も親切にしてもらったので悔いありません」というものでした。
悔いのない人生、悔いのない闘病生活だったようです。入院治療を続けていたのは、和歌山労災病院で、ここの看護士さんは、入院患者だけではなくて病室で看病している家族や付き添いの人に対しても親切で、家族の心のケアもしてくれたようです。不安を感じているのは家族も本人と同じです。その家族の不安を取り除いてくれた看護士さんに感謝の気持ちを示していました。
看護士さんのお陰で満足と納得できる闘病生活になったのです。「主人も治療には納得している筈です」と奥さんが話してくれました。
そして奥さんから紹介を受けたのが、手塚治虫さんのブッダです。奥さんは以前ブッダを買って読んでいたのですが、死が身近なことではなかったためしっかり内容を覚えていないことから、再度読み直しています。そこでブッダから死について学んでいると聞きました。全て読み終えていないのですが、読むことを薦めてくれました。生と死は人間にとっての大きなテーマですし、そろそろ考えておきたいテーマです。初盆参りで人の死に直面し、死が他人事ではなくなっています。死を知ることは生を知ることです。人生で最大の恐怖である死について学びたいと思います。
Hさんは手品の名人でした。平成21年の市民会館の舞台が最後となりました。平成22年の秋は闘病生活のため舞台に立てませんでした。早いもので手品の舞台に立っていたのは2年前まででした。平成23年秋の手品の舞台には後輩が立つことになりました。後輩が奥さんのところを訪れた時、奥さんは亡きご主人の手品の道具を譲り渡したのです。大事に仕舞っていても価値は無いので、後輩に使ってもらうことが主人も望むことだと思ったからです。道具を譲り受けた後輩が手品の舞台に立ちます。しっかりと見届けたいものです。こうして技術や気持ちは次の世代に受け継がれていくのです。何事も自分の代で終わりにしてはならないのです。次の世代に伝えること。それが生のある人の使命です。
他にもTさん、Hさん、Kさんを初めとする皆さんに感謝の気持ちを届けたいと思います。本当にありがとうございました。次の世から見守って下さい。
夜は懇親会に参加しました。お盆のため各地から和歌山市に戻ってきた皆さんとの懇親会でした。スマートシティ、和歌浦の磯焼けを元に戻す計画について、和歌山県の就職率は何故低いのか、企業誘致がこれからも苦戦する理由について、日本の港湾は世界を相手に戦えないこと、などを話し合いました。
議論の内容は割愛しますが、答えは外国を知ることにあります。国内だけを見ているようでは世界と戦えません。国内の常識で世界相手に戦えないのです。つまり世界を知らない人が日本の成長と可能性を阻害しているのです。今までの常識、今までと同じで良いという思想は危険なのです。
中国は世界を見て戦略を練り戦っています。世界を知っているリーダーと中間層がいるのです。戦っている相手である世界を知ることが何よりも大切です。明治維新後の新しい政府を築いたのは世界を見てきた政府の人達です。国内を守っていた優秀な人でも太刀打ちできませんでした。世界を知ることはそれだけ大事なことなのです。
和歌山県だけを見ているようでは話になりません。小さなことに心を痛めないで大きな視点を持つこと。それに尽きます。