活動報告・レポート
2011年7月17日(日)
年に数回のお店

年に数回だけ開店するお店があります。このお店のオーナーはプロカメラマンで、撮影のため一年の大部分を外国で暮らしています。仕事は東京からの依頼が全てで、和歌山県内での仕事は残念ながらありません。オーナー曰く「和歌山は良いところです。どこに住んでいてもきっちりと仕事をしていると仕事の依頼は来ますから、東京にいる必要はないのですよ」。その通りです。仕事は人に集まりますから、人のいるところに仕事の依頼がやって来ます。

さて日本にいることが少ないオーナーですから、お店を開店するのは年に数回程度となります。帰国した時にだけ開店する、ちょっと贅沢なお店なのです。それも何時帰国するか分からないので、通常は開店している日も分かりません。そのためオーナーの知人が集まるような、気心の知れたメンバーのお店なのです。私も年に数回、開店する時にお誘いをいただき参加しています。

今日も店内が満員になる賑やかな集まりになりました。オーナーはインド、フランスから帰国したばかりで、次はアラスカに撮影に行く予定ですから、この機会を逃すとまた数ヶ月はお店を閉めた状態になります。本当に不思議なお店なのです。

しかも値段は定額制ですから相当安価です。メニューも新鮮な魚介類や珍しい食材を使ったものがあり、この値段で食べられることが不思議なのです。今回はフランスに撮影に出掛けたことからワインをいただきました。フランスのブドウ畑に行くと、とてもきれいで輝いているように映るそうです。ロマネコンティのブドウ畑は輝いていて、素人でもこの場所から収穫されるワインは一級品だと分かるそうです。流石にロマネコンティとは行きませんが、今日のワインの味は料理に合っていました。

参加したメンバーは自営業の方が多く、それぞれの分野のプロといえる皆さんでした。個人の実力で生きていく、皆さんにはそんな力強さが備わっていました。

世界の話を聞くと日常の小さなことを忘れてしまいます。命懸けのチーターの撮影のことや、高山病との戦いでもあったチョモランマの撮影など、どれもこれもプロだけが語れる一級品の話でした。野性動物の中での撮影の瞬間、生きていることに感謝したくなるそうです。日常生活を過ごせていることが幸せだと気づくのは、今の日常生活を離れた瞬間です。非日常に接すると日常が幸せなことに気づき、それを大切にしようと思います。生命を賭けた仕事というものは少ないのですが、そんな仕事に従事していると生命に輝きが満ち溢れています。

そしてチョモランマでも撮影も命懸けです。登山家でないカメラマンが、気圧の高い場所で撮影することは危険を伴います。危険を覚悟で撮影現場に挑む。その姿を想像すると勇気が湧いてきます。安全な日本で、そして地方都市に暮らしている限り、生命の危機に直面することは余り無いと思います。そんな都市で生活していても批判や噂が飛び交いますから、心を悩ますことがあります。でも世界を舞台にしている人からすると、取るに足りない小さな話です。人の足を引っ張ったり批判を言っても何の進歩も徳も、それに得もありません。そんなことに時間を割いているのであれば、自分を高めることに時間を使いたいものです。その時の気持ちに応じた読書、今日のように世界を舞台に戦っているプロの仕事人の話を聞くなど、前向きな時間を持ちたいものです。その瞬間は批判や噂といった呪縛から離れ、そして心は違う場所に飛んでいきます。次の日からは、違った一日を始めることができるのです。

年に数回だけ開店する不思議なお店。この空間には世界の空気が潜んでいますし、心を回復させてくれる作用もありそうです。和歌山市に存在する異空間。魂を解き放つ再生の地、和歌山県に必要な存在です。