岩手県から、世界文化遺産に指定された平泉を是非とも訪ねて欲しいと依頼がありました。岩手県を支援する方法は、勇気づけること以外にありません。そして岩手県にとって勇気のシンボルが平泉なのです。急遽、平泉町役場を訪問しました。
和歌山県でも、高野山と熊野古道などが世界文化遺産に登録された時の盛り上がりと勇気がありました。世界が価値を認めてくれることの喜びは世界文化遺産の登録を得た県でないと分からないものがあります。地域にとって誇れるものがあることが自信と勇気になるのです。
平泉は余りにも有名で、世界文化遺産に登録されなくても、日本人にとってその価値は変わるものではありません。ただ世界がその価値を認めてくれたことは日本人として嬉しいことですし、何よりも災害復興に向けての勇気となりました。岩手県が復興支援のためにも平泉を訪れて欲しいと言ったのは、観光客200万人の小さなまちが注目されていることを岩手県全体として誇りに思っているからです。そして平泉は復興のシンボルであることはこの一言で分ります。
「覚えておいてほしい。2011年、平泉が世界文化遺産に登録され年に、ふるさとに未曾有の震災がおこったことを。そして、そこから私たちは、新しい歴史を歩み始めた。覚えておいてほしい。2011年、その年こそ岩手の希望元年」。これが平泉の現在における役割なのです。
絶望を取り除くためには希望が必要です。東日本大震災の絶望を取り除くためには希望が必要なのです。岩手県にとっての平泉は希望そのものであり、希望に多くの人が接することが、希望を輝かせることになるのです。そこで平泉町役場を訪ねました。
平泉が世界文化遺産に登録された最大の理由は、理想世界の実現を目指して造営されたからだと思います。歴史的、文化的価値もあると思いますが、精神的価値をなくして世界文化遺産はあり得ないと思います。理想世界を表現しているのが平泉であり、その解釈を理解してもらうことが難しかったと伺いました。日本人が持っている精神的価値観を、世界に理解してもらうことは簡単ではありません。平泉の理想世界とは浄土世界のことであり、その価値を理解して表現することが難しい作業であったようです。
さて平泉の観光客は160万人から200万人の間で推移していました。平成17年にNHK大河ドラマ「義経」で200万人を突破してから、それ以降毎年200万人前後の観光客を集めています。
そんな中、東日本大震災が発生し、4月の観光客は対前年度比マイナス20パーセント、5月の観光客の対前年度比はマイナス89パーセントにまで落ち込みました。これでは勇気も希望も与えることができません。世界文化遺産に登録された平成23年度は30パーセント観光客を増やす計画としていましたが、その達成は困難に状況になっています。岩手県の支援は世界文化遺産に行くことも、大切な支援活動なのです。みんなの目が岩手県に向いている。そんな状況を作りたいものです。
災害で落ち込んでいる。観光でも落ち込んでいる。世界文化遺産に登録なったのに観光客が来てくれない。そんな状況を作っては駄目なのです。周囲からは元通りの岩手県として接すること。そして復旧支援とそれ以外の要望のある支援を行うことが、岩手県を元気にすることが出来るのです。
希望のシンボル平泉。そこにも注目して欲しいと思います。小さな力でも集めると大きなものになります。平泉が世界文化遺産に辿り着くまで20年を必要としています。その経過も応援したくなる要因です。