活動報告・レポート
2011年7月4日(月)
岩手県

今日から水曜日までの三日間、岩手県に入りました。目的は3月11日の被災地の支援と復旧状況を確認するためです。午前中に和歌山市を出発し昼頃に岩手県庁に入り、情報把握と意見交換を行いました。

岩手県では総合防災室から貴重な情報提供を受けました。津波発生当日の生々しい映像を見せていただき、改めて津波の凄まじさを感じました。当初、津波は3メートルという情報が流れたため逃げ遅れた人もいたように聞きました。また津波発生の50時間に、余震があり津波が到来するという情報もあったのですが、信憑性を誰も証明できないので、余震の状況下で避難勧告はできなかったようです。

総合防災室の特別参与は自衛隊から出向している方で、3月11日は陣頭指揮をとって対応していたことを知りました。訓練を受けている人の存在は有事の際に欠かせないものです。経験がある人か訓練を受けた人が存在することが有事の際に組織を規律正しくしてくれます。そんな組織としての備えが必要なのです。

さて当然のことですが岩手県では過去の津波被害を把握しています。古い順に、869年の貞観津波の死者は約1,000人、1611年の慶長三陸津波の死者は約3,000人、1896年の明治三陸津波の死者は約1,800人、1933年の昭和三陸津波の死者は約2,700人、そして1960年のチリ津波の死者は62人です。正に岩手県の歴史は津波との戦いの歴史でもあります。

海岸部に行くと分ることですが、「津波予想区域」の看板が道路に設置されているなど、津波危険区域を示す表示があります。この地域内は津波が襲ってくる可能性のある地域であることを示しているのですが、その想定を超えた津波が今回の3月11日津波だったのです。そして文献から貞観津波と慶長三陸津波の被害を引っ張り出して、過去の事例を基にした想定を基にした復興計画も検討する予定です。

また今回の死者の90パーセント以上は津波被害によるもので、地震発生だけだったらここまでの被害には拡大していなかったと予想しています。津波被害の凄さと恐ろしさが分る実態です。

そして今回の津波被害についての問題点と対応策は以下の通りです。

  • 従来の想定を遥かに超えた津波だったこと。これに対して文献の被害想定を入れて、今後の防災計画を作ることにしています。
  • ハードに依存した防災対策は限界があること。ソフト対策が重要となります。
  • ハザードマップよりも大きな津波だったこと。そのため避難所にいて被害を受けた人もたくさんいました。ここには貞観津波と慶長三陸津波を入れていなかったので、これらの津波の被害状況を推定して、ハザードマップに組み込むことにしています。
  • 発災当初、通信手段が断絶したこと。これは通信とバックアップ体制が不可欠です。

教訓としては、次のものがあります。

  • 自衛隊の協力があり復旧体制が整っていることがあります。県庁の12階を司令塔として設置し、県庁と協力しながら対応している状況です。
  • 沿岸部の市町村と通話や連絡が取れなかったことから情報収集が困難だったことがあります。3日目にようやく衛星携帯を市町村に配布して連絡体制がとれました。災害発生から2日目の朝でも情報は災害対策本部に入らなかった現実があります。そのため情報は自衛隊の無線で入手していました。ヘリコプターによる巡視で鳥の目は足りていましたが、現地の情報がなく蟻の目が不足していました。
  • 物資が届くのは3日目です。備蓄は3日間必要となります。人命救助体制としては、岩手県と津波被害が想定される市町村、そして自衛隊との間で災害発生時の活動拠点を決めていたので、連絡を取り合わなくてもその場所に集まり活動を開始できていました。

以上のような情報をいただきました。現場経験からの貴重な見解です。これらの経験を踏まえて防災計画を作る必要があります。

また災害支援も必要ですが、岩手県としては必ず復興できると確信しています。もう自立して活動する姿勢を持っています。そして復興の精神的支柱が世界文化遺産に登録された平泉です。岩手県を挙げて世界文化遺産登録の活動をしていました。そして2011年、世界文化遺産に登録となったのです。東日本大震災の年に平泉が世界文化遺産となりました。これは復興の希望の光になっていることを伝えてもらいました。

復興支援に来てもらうことも嬉しいことですが、平泉に来てくれることで元気づけられることを話してくれました。支援の方法は幾通りもあります。もっと自由に支援を行うこと。岩手県に行くことが支援になります。岩手県からの貴重な情報をいただき感謝しています。

関西広域連合会事務所

続いて関西広域連合の事務所を訪れました。この事務所は県庁から徒歩10分程度の場所にあります。週に一度、岩手県と情報連絡を行っているのです。ここで大阪府と和歌山県の職員さんが経験を積んでいます。関西広域連合の事務所は平成23年度末まで設置する予定で、復旧から復興への過程に直接関わることによって、貴重な経験を和歌山県に運んでくれることになります。これは財産であり、和歌山県として絶対に必要な経験です。

岩手県の皆さんとの情報連携と意見交換により、輪郭が掴めました。