活動報告・レポート
2010年10月9日(土)
JAXA
JAXA
 宇宙航空研究開発機構(通称JAXA)筑波宇宙センターに行ってきました。個人的に、和歌山県を宇宙に一番近い県にすることを目標にしていますが、現在において和歌山県は宇宙に近い取り組みを実施しています。平成22年夏のNASAでの教員トレーニングへの参加に加えて、今回、筑波宇宙センターにおいて「宇宙ホンモノ体験教員研修コース」が開催されました。研修に参加した8人は全て和歌山県の教師の方々です。県単位で教師の体験コースを実施したのは和歌山県が初めてのことではないでしょうか。和歌山県の教員の教育トレーニングは素晴らしいものがあります。
 宇宙は生命の源であり、全てを生み出してくれた空間です。その宇宙を学校教材として取り入れることが出来たなら、子ども達の関心が高まること必死です。宇宙体験に参加した8人は全員が理科の先生です。理系離れが言われている中、理科に関心を持ってもらえるためにも宇宙を素材として活用したいものです。
 参加して本当に良かったと思っています。ホンモノ体験の素晴らしさを実感でき、子どもの時に思った宇宙への関心が高まりました。大気圏の厚さは100kmですから、わずか100km上空が宇宙になります。地球で暮らしている私たちですが、宇宙とは100kmの距離にあるのです。この大気圏の外に飛び出すための訓練を行っているのが、この筑波宇宙センターなのです。
 訓練は宇宙飛行士適性訓練、閉鎖空間体験などです。教師8人は昨日から参加して、閉鎖空間で実際に宿泊しています。閉鎖空間は宇宙船の中を再現したもので、宇宙飛行士が訓練に使用している閉鎖空間がここにあります。この場所を体験すること自体が、他では味わえない貴重な体験です。ベッドと机椅子、トイレがあるだけの閉鎖空間ですから、数日ここで暮らすことになると相当の精神力が必要となります。狭い空間での共同生活は精神力とコミュニケーション力が求められます。宇宙に飛び出すと狭い宇宙船の中での共同生活となり、外に逃げ出すことはできません。他人とのコミュニケーション力が何よりも必要なのです。
 閉鎖空間におかれていたのがジグソーパズルです。パズルを組み立てる時の態度でも適正が分かるそうです。粘り強さ、判断力、耐性などが観察されることになります。勿論、宇宙体験では適正が判断されることはありませんが、本物の宇宙飛行士になるためには、適正が試されます。
 また訓練用の宇宙服を着せてもらいました。重くて動くことは容易ではありませんでした。手袋の先が卓球のボールのようになっていて、小さいものを掴むことは簡単ではありませんでした。ややストレスの掛かる程度の感覚がありました。宇宙で生活をすることや仕事をすることは、強い精神力がありストレスに強い性質が求められることが分かります。
 参考までに宇宙服は14層で出来ていて、制作費用は5億円と聞きました。宇宙に出ると気温差は半端ではありません。太陽が当たっている場所は100度を越えますし、太陽が当たらない場所になると零下100度を越えます。つまり200度の温度差の場所での仕事もある訳です。それに真空ですから、対応するための宇宙服になっているのです。
 簡単に考えても宇宙船内の気圧は1気圧、宇宙は気圧ゼロですから、宇宙服は風船のように膨らみます。動きにくくて気温変化が激しく、気圧が異なり、酸素が7時間プラスアルファの環境で宇宙船外での作業を行うのです。強い精神力と体力が必要であることが理解できます。
 さて教師の方々と話をしました。とても勉強になりました。
 生徒に教えるためには、自分が体験をしなければ本質的な部分を教えることができません。教師は教科書の内容を理解しているため教えることが出来ます。ただ体験が伴っていないことがあります。例えば戦争体験をしていない教師が戦争を教えても、それは勉強したことを伝えていることになります。世界史を教えていても世界中を旅した経験をした教師は少ないと思いますし、歴史になるとその時代に存在していないので、やはり得た知識を教えているのです。理科の中の宇宙に関しても同じです。宇宙を体験していない教師が宇宙を教えるのと、今日の体験をした後で教えるのでは天と地ほど授業が違う筈です。
 丁度、ある中学校では来週から理科では宇宙の分野に入るそうですから、適正な体験をしたことになります。
 体験した人と体験していない人では、生徒への言葉による伝え方は全く違いますし、何よりも迫力が違います。説明は本で得た知識の場合は、その知識の枠からはみ出す事はできませんが、宇宙体験をした人は自らの言葉で宇宙を教えることができます。その違いの大きさに気づくべきです。今日体験した教師が教えた生徒の中から、将来、宇宙飛行士が誕生するかも知れませんし、JAXAに就職する生徒が現れるかも知れません。事実、和歌山県出身で、JAXAで働く人は8名いると聞きました。JAXAに就職することが一気に身近になります。
 教え方が上手だったり、知識の豊富な素晴らしい教師はたくさんいますが、若い教師には自らの体験をして欲しいと思います。体験したことによって、その分野で一番の教師になれると思うからです。一番の分野を持っている教師に教えてもらえる生徒は幸せです。
 三日間の宇宙体験を引っ下げて、8人の教師の方々は来週、和歌山県に戻ります。宇宙ホンモノ体験をした教師の活躍が楽しみです。宇宙に最も近い和歌山県が自慢する8人の教師が誕生しました。初めてで貴重な体験を希望された教師の方々の姿勢と実行力も素晴らしいのですが、快く送り出してくれた校長先生も、素晴らしい感性の持ち主だと感じています。教育はこうして作り上げていることが分かりました。自らの経験に勝る知識はないのです。